「殺しの感触」―大阪浪速区の姉妹殺人事件

一緒に観た斉藤さんお元気ですか

「母親を殺したときの感触が忘れられない」
――この見出しは確かにショッキングだった。
大阪浪速区の姉妹殺人事件は、
犯人逮捕後から
「たまたま目についた。誰でもいいから殺したかった」などと、
マスコミが飛びつきそうな証言を次々と。
報道を知るたびに思う違和感はなんだろう。


最初に私は感じたことは
「結局事実の前には、大多数の人が動揺してしまうのだな」ということだった。
羊たちの沈黙』のレクター博士や、
古くは青ひげ、切り裂きジャックの例を出すまでもなく
世の中には「理由もなく殺人衝動におそわれ、
それを実行してしまう人が何%か存在する」という事実に
我々は何回もさらされてきているし、そういった事実を基にした
映画や小説に数多く触れてきたと思う。しかしながらやはり、
こういう人を実際に目の当たりにすると動揺してしまう。衝撃を受けてしまう。
この犯人の顔を隠すでもなく連行する様は多くの人が見たと思うが、
私はこの男の顔を見て、不思議と動揺してしまった。
その気持ちが私は……新鮮だった。発見だった。
そういう気持ちこそが、「理性」を獲得する何か手がかりのような気がしたのだ。


私はこの事件のてん末を知るにつれ、
『ヘンリー』という映画のことを思い出した。
70年代のアメリカで実在した300人以上の女性を殺した殺人犯、
ヘンリー・リー・ルーカスを描いた映画だ。http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD8086/comment.html 
ASIN: B000064NA1
この映画は淡々と彼が殺人を繰り返す「行為」(残虐な殺人方法という意味ではない)に
焦点をしぼってつづっていく。理由や感情の起伏はほとんどと言っていいほど描かれない。それが逆に、殺人衝動のリアリスティックな表現になっていた。
殺したいほどの愛憎や利害とはまったく無関係な殺人。
性衝動と殺人が結びついている場合はまだ推し量ることもできなくもないが、(http://d.hatena.ne.jp/hakuouatsushi/20050818 参照:自殺ネット殺人事件)
……どういうんでしょうね。彼らにとって殺人は「食事」とかの行為と同じことなのか。
少なくとも浪速区彼は母殺しのときの「忘れ得ぬ感触」を
告白しているから、なんらかのエクスタシーを感じていたのだろうが。


いくらニュースや事実に基づいた映画で
「理由なき殺人者」を目の当たりにしてきていても、
どこかでそういった存在を「たまたま異常なものとして生まれてしまっただけだよ」
「そんなのは極々まれなもの」「何かの間違い」と思って
かわして生きていくのかもしれない、人間というものは。
自分には関係ないこと、そんな事件は「フィクション」として
心のフォルダーにしまって封印する作用が人間にはあるのではないだろうか。
だから、こんな事件が起こるたび、
もしかしたら私の隣人にも、ひょっとしたら自分の中にも
「説明できない殺人衝動の因子」が備わっているのかもしれないと気づかされて、
人は知らず一瞬怯んでしまうのではないだろうか。
私が感じた「違和感」とは、そういうものなのかもしれなかった。


●追記
と、書き切ってから一応ヘンリーに関することを
調べていたらこのかたレクター博士のモデルだったようですね、
ああ浅学、失礼しました。彼に代わるフィクション上の大有名殺人者を
思いつかなかったので恥を晒したままにしておきます。セルフ戒め!


●今日の一食
目白 「天作」
http://www.tensaku.tokyo.walkerplus.com/


こんないいお店私みたいなチンピラ物書き
とても敷居をまたげるようなトコじゃないのですが
友人実業家Cさんの年忘れ飲みのご相伴に預かりました。


天ぷらはいずれも上品な揚がり具合で
品数多く頂いてもしつこくない。
うに、かき、芋(甘い!)などいただきつつ
酒のおつまみをあれこれ。
目にも鮮やかな銀杏をサッと油に通し
たっぷりのイクラと頂く一品がとてもおいしい。
イクラはちょっとでも火が強いと白濁してしまうのだけど、
そこが料理人の腕なのでしょう、ほどよい「ぬくさ」が
双方のうまみをさらに活き活きとさせて
忘れられないものとなっていた。


昨日は頂きませんでしたが
名前はなんといったか
出来立てのかき揚げをバラッとくずし
白飯と三つ葉でサッと合えてお出汁でちょっとあじつけ、
そのアツアツでしめとするご飯ものがあるのですが
それは、まさに「かっこみたくなる」お料理です。
天茶かき揚げ丼もいいですが、
こちらを訪れた際は是非。
美しいベルベット・ヴォイスの女将も素敵ですよ。


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