ドキュメンタリー・中村吉右衛門

屋号「播磨屋」

こんにちは、本当にハンガリー語では「塩が足りない」ことを「シオタラン」というのか
気になって仕方ない白央篤司です。すっごい小ネタ&関東オンリーな話ですが
今発売されてる「TVブロス」の表紙は面白いですよ。見逃さないで。


●「日向嶋景清までの十ヵ月」

3月26日、NHK教育で放送された
「日向嶋景清(ひにむこうしまのかげきよ)までの十ヵ月」という番組が大変面白かった。
歌舞伎役者の中村吉右衛門が、人形浄瑠璃の台本をもとに新たに歌舞伎を
一本創り上げるまでを追ったドキュメンタリー。


吉右衛門がまず、みずから台本を書いて(なんと字の上手いこと!)、
舞台音楽(下座とよばれる長唄連中、鳴り物連中。簡単にいうと
歌とパーカッションと思って下さい)、そして竹本というメイン音楽パート
義太夫、簡単に……言えない。ミュージカルにたとえると、
歌と伴奏部分を担当すると思って下さい)と相談して音を付け、
俳優の動き、メイクや衣装、大道具、照明などすべてを練り上げていく。


本物の歌舞伎役者というのは、みんな小さい頃から裏方の仕事をみつめ、
その構成を熟知した舞台のプロばかり。歌舞伎役者ほど「演出」ができる
役者連中もいないと思う。照明がどう当たるとどういう影が出来て、
それが舞台上でどういう効果になるか。大道具をこう立てたら、出入りがこう出来て、
この位置に立つとどんな風に観客の目に映るか、キチンと頭の中で理解できる。
そういうことが、歌舞伎役者としての「一流」の証しのひとつなんだと思う。
そんな仕事ぶりをイチから見られるのはとても面白く、スリリングだった。


吉右衛門さんが語るセリフの一部分がやけに心に残った。
「生きるも地獄、死ぬも地獄。同じ地獄を見るならば、この世の花を見さっしゃい。
死んで花実が咲くものか」昔から語られる定番名文句だが、
吉右衛門の語り口で、抑揚で、あの「声」で、響く文句の心地よさは格別だった。
とかく殺伐としたのニュースが多いここ最近、
古典芸能の持つ「すごさ」と「暖かみ」は、もっと注目される価値があると思う。


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