『ブロークン・フラワーズ』

助演のシャロン・ストーンが最高!

こんにちは、林家木久蔵
原節子」と共演したことがあると
知って驚いている白央篤司です。ちなみに映画タイトルは
『白雪先生と子供たち』という映画。マジかよ。
さて昨日までズーッと軟派ネタでしたから
今日はちょいと映画論っぽいもの。小理屈ひしめいてますよー、
はい「戻る」とかクリックしないで。まあジャームッシュ・ファンの
人でも読んでいただければ幸いです。


 『ブロークン・フラワーズ
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレーシャロン・ストーンジェシカ・ラング
ジュリー・デルピーほか。2005年カンヌ映画祭グランプリ作品


ジャームッシュ映画を観るといつも私は
「これって、『俳句』だなあ!」と思ってしまう。
そこが彼の映画の凄いとこでもあり、感想を書く上で、
とっても「やっかい」なところでもある。
どういうことかうまく説明できるかな、やってみよう。


俳句っていわゆる「五・七・五」だけの言葉で出来てる簡潔なものだ。
それでいて表現してるものはとっても深かったりする。
このツールって「オチ」や「物語」を描くようなものじゃない。
人生や自然における「一瞬の美」や「永遠」を切り抜き、描き出すもので、
すぐれた俳句だと、そこに余韻としての「ドラマ」まで生み出しちゃう
とてつもないものだ。例を挙げると、こうだ。


「しずかさや 岩にしみ入る 蝉の声」という芭蕉の句。
まず出だしが凄い。「しずかさや」という詠嘆からはじまってるけど、
蝉の声なんて普通はうるさいものなのに、それがなんの不思議もなく成立しちゃってる。
夏の山奥、緑が広がる山道。永遠に広がるかのような山の緑。
無限の続くかのような蝉の声。でも、「蝉」という存在は儚い命の代表でもある。
だけどまた来夏、その次も蝉はまた出でて泣くのだろう。
そんな情景を何百年も見てきたであろう岩が、そこにある。
この句から浮かぶ情景はこんな感じだ。私の場合ね。
でも、こんな小理屈こねなくとも「永遠」と「一瞬」を
なんとなーく「誰にでも」感じさせちゃう句だと思う。実際に見たことなくても、
日本古来の自然の絵が頭に思い浮かんじゃう句だと思う。
ジャームッシュの映画のすぐれたいくつかのシーンって、
こんな凄さを感じるんだなあ。


松尾芭蕉の「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」という
あの有名な一節って、まさにジャームッシュの映画だな、と思う。
生きるということ、それ自体が「旅」だとジャームッシュは思ってるんじゃないだろうか。
すれ違う人のおしゃべりも、隣り合わせた人々も、一夜の旅の宿のベッドすらも、
何か運命的で、何か意味があるような、ないような。
小さい「一瞬」のエピソードが連なって重なって、
そのつながりに意味はないんだけど、人生それ自体が「旅」という「永遠」になっている。
彼はそのことを、映し取ろう、描き出そうとしているんじゃないだろうか。
だから、話全体を貫く「ドラマ」なんてものは彼の映画にはいらない。
小さなエピソードの意味のないような連なりが、彼のドラマなんだと思う。


だからジャームッシュ作品って、「どうみてもご自由に」という立ち位置なんだと思う。
「正解」がないのだ、作品の解釈としての。
それって、名カメラマンが「自然」のある一瞬をポンと切り取ったような
うまさと似ている。自然写真の素晴らしさに、正しい「解釈」なんてあるだろうか。
芭蕉の句の味わい方に正解があるだろうか。
そういう観点から、この『ブロークン・フラワーズ』に関しては
「良かったから、観てみて」としか書けない。
本作はビル・マーレー(『ゴースト・バスターズ』のおじさんだ!)の
素晴らしい演技によって、多くの人が楽しめるような喜劇的側面が生まれてるから
オススメしやすくは、あるけどね。
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の名作『舞踏会の手帖』(1937)の
男版といった趣きのストーリーです。それをジャームッシュが料理すると……? 
正解や原因をきっちりドラマに求める人はちょっと辛いかもだけど、
私は、もっのすごく好きな作品だ。観て損はないと思う。
GW渋谷・シネマライズ他で公開予定。


お知らせ
ブログランキングに登録。
1日1クリック↓プリーズ!
http://blog.with2.net/link.php?198815


今日の一食
神保町・「マンダラ」のインドカレー
http://tokyo.gourmet.livedoor.com/restaurant/info/274.html



久々ごはん日記。ちょっと胃腸疲れ気味で人様にお見せできるような
ものを食べていなかったので……まあ貧乏ということもあるのですが。
復活1回目はインドです。むしょうにインドカレーって食べたくなるときが
あるのですが、大体そういうときはスーパーで
「デリー」のカレーレトルトを食べるのですが http://www.delhi.co.jp/text/news.html
(結構本格的でおいしい。「決して煮込まないで香りが飛ぶから」という注も頼もしい)
タイミングよく編集のKさんが誘ってくれました。ありがとうございました。
ここの野菜カレーはマイルドで、ランチだとナンもサフランライスも楽しめます。
辛さはオーダー時に調節できるので苦手な人でも楽しめると思います
きちんとサフランの香りがして嬉しいなあ。上品な味わいでした。
今度は一番好きな「ほうれん草とカッテージチーズのカレー」を食べよう。