今ひとたびの「おそめ」

良著です

先日このブログでも紹介した
「おそめ」という本を、
http://d.hatena.ne.jp/hakuouatsushi/20060415
京都の友人に勧めたところ
面白いことが起こったのでちょっと書き留めておきたい。

彼はまだ大学生で、配膳のバイトなどをしているのだそうだ。
結婚式場やホテルなどに派遣されて給仕をするのが仕事内容なのだけど、
おそめゆかりの場所で働いているのだという。驚きがよく伝わるメールが昨夜届いていた。
「岡崎に建てたおそめの豪邸が、今は結婚式場になってるんです」
祇園と銀座の二大繁華街で一世を風靡した夜の蝶・おそめが建てた
大きな桜の木と能舞台があったという伝説の家だ。
晩年のおそめには広すぎて勝手が悪く、また維持費も莫大なことから、
事業に失敗したことも重なって泣く泣く手放したという、あの場所。
おそめ最後の栄華の象徴となった、あの家だ。
女の人生が詰まった家を、どうしても売りたくなかったおそめ。
彼女は売る条件として、
「桜だけは残してほしい。その意志を酌んでくれる人やないと売りまへん」
と切望、なんとかその条件を呑んでくれる人が見つかり、現在の結婚式場に
なったのだとか。私はすぐさま、
「桜は見たのか」と尋ねた。
「ええ、まさに満開のときに。本当に大きくて綺麗だった」
散る桜の薄桃色のような儚くも美しいおそめの幻影が、
そのメールからふと、しのばれるような思いになった。
こんな偶然もあるのですね。