「国家の品格」(藤原正彦:著)

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)


今更ながらに大ベストセラーなわけですが読んでみました。
明快な論理で大変読みやすく、小見出しを多用してひとつのパラグラフを短くし、
終始飽きさせない構成はさすがに「売れる本」だけありますね、一気に2時間弱で読了。で。

うーん、この本って沢村貞子(女優・エッセイスト)さんの書いているようなことを
学者的に言い換えている本なんだな、というのが率直な最初の印象。
いや、言い換えているなんて失礼だな。つまりは第二次大戦前、
日本が軍国主義に染まる以前に確かにあった「美徳」というものや、
日本人特有のアニミズムや倫理観を礎にして「生きる」ということを説いている本なので、
思想の根本が彼女と一緒なのだと思う。(藤原さんの本文中にも出てくるが)
「おてんとうさまが見てる」「バチがあたる」という倫理観、これですね。
昭和一桁の頃に娘時代を過ごされた沢村さんは、その自著(「私の浅草」、名作中の名作!)
などで、“今は死に絶えてしまった価値観”としてよく
「みっともない」「分相応」ということを取り上げておられた。
彼女の場合はそれを「失われたものへの美しいオマージュ」として昇華してていたが
(その慎ましさも含めてウケたのだと思う)、
この本は「ダメなものはダメ」というルールが厳然とあった時代への回帰を熱心に、
真剣に(ここがミソ)説いているのだ。中野翠さんなども良く言っているが
「卑怯という言葉の完全な死滅」を彼は嘆き、
その「卑怯ということは最も恥ずかしいこと」という感性を今、
少年少女に叩き込まねばダメだ、つまりは「武士道精神の復活」ということを
本の主幹として説いていく。そしてうまいタイミングで
ナショナリスト」と混同されないよう注意を払いながら、国粋主義ではない、
「祖国愛」という概念が大事だとたたみ込む。この概念の流布にかける「パッション」が、
読み応えがあるんだなあ。そう、内容というよりも新書一冊
グイグイと読みすすめさせる「思想への情熱」が、この本を価値あるものにしているのだ。
(などというと内容には賛同しかねるのかというと、そうではない。
この方の言ってることは概ね「常識」なので、今更ああそうか、という発見の類の内容では
ないと思う。うーん生意気)久しぶりに面白い大学の授業に出た気分を味わいました。


●お知らせ (はっつけるの最近忘れてました…ヨロシクです!)

ブログランキングに登録。

1日1クリック↓プリーズ!

http://blog.with2.net/link.php?198815