「快楽亭ブラックの放送禁止落語大全」

「快楽帝ブラックの放送禁止落語大全」(洋泉社


快楽亭ブラックの放送禁止落語大全

快楽亭ブラックの放送禁止落語大全


●「耳が怖がる」
ショッキング。衝撃。驚愕……なんて書いたらいいのだろう。
快楽亭ブラックの落語を初めて聞いたときの「動揺」は今でも(オーバーな表現だけど)筆舌に尽くしがたい。
4、5年前に浅草の寄席で聞いたんだけど、帰り道ずっと私はなんだか混乱していた。
「生まれて初めて!」ってな体験なんぞ年々少なくなっていくもんだが、
あれは正真正銘、人生で初めての感覚だった。
「耳が怖がる」という感覚、分かりますか? 聴いてるうちに自然鼓膜を閉じたくなるような、
外耳と中耳と内耳、そのすべてをギュウッとつぼみたくなるような、そんな不思議な感覚。
もう彼の話すネタのヤバさたるや、自然DNAが聴くことを拒否したくなります。
なんていうかねー、「私この件に噛んでないもん、知らないもん!」と聞いてて思わせる独演会なんて
そうそうあるもんじゃないですよ。


●立派なゲテモノ
彼は創作落語のネタに、やんごとなき人々や創価学会朝鮮人などをガンガン取り入れ、
しかもすべて「そっ、そこまでするう!!」と聞き手が心底ビックラこくほどの
イジリっぷりで話を進めていきます。普通の凡庸な才能ならせいぜいが「さわり」としてトークに散りばめて、
絶対に安全地帯を死守するところを、なーんにも保身とか「当事者には悪いが」的配慮なんか考えちゃこない。
ヤクザの鉄砲玉みたいな感じで常に猪突猛進。そう、彼の笑いにはアナーキズムとか体制批判とか思想もクソも
ありゃあしないのだ。乱暴なたとえだけど、彼の笑いの原動力って子供が意味なく「うんこ」とか「チンコ」とか
言ってゲラゲラ笑いだしちゃう感覚に近いと思う。
「忌み言葉」をいじって笑うような、人間が持つプリミティブな感情が、
彼の落語家としての原点なんじゃないだろうか。
そこを土台に、知識やパロディ精神(これは知性だ)、彼一流の「ストーリー構築能力」で持って
「やばい」素材を料理していく。しっかりとしたセンスがあるから、単なるゲテモノにならない。
そう、「たいしたゲテモノ」になっている。


●CDが付いてますので、聴いてから読んでください
誰かの言葉だったか忘れたが、「悪趣味も突き詰めれば高級」みたいな言葉があったような。
彼の世界は間違いなく一流の悪趣味だと思う。
「だって俺が面白いと思っちゃってるんだもーん」というただそれだけの確信だけで、
どんどん突っ走っていく彼の落語。ブレーキの壊れた暴走自動車のように、危なっかしくもスリリング。
そんな彼の世界が本になった。はい、なんとここまでが前置きです。
あっはははは完全にライター失格な文章ですね。無視して進めますが、
いやーやっぱり本じゃこの面白さは伝わりませんね。私は大体が聴いた話だったから面白く読めちゃったが、
まずはやっぱり高座に行って彼の独演を聴いてほしいと思う。
文字になると、どうしても「まずいよこれ」と思った瞬間読むスピードが止まってしまう。
そこでテンションが切れちゃう。こっちの「やっべえ」という危惧を
なんのお構いなしに畳み込んでくるあのデンジャーなライブを、
ぜひ味わってから「快楽亭ブラック」を読んでほしい。


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