「食べていかなきゃならないもの」――小巻よ、お前もか

「配達されない三通の手紙」は名演

「食べていかなきゃならないもの」
人生の折々でこんなセリフを耳にしますね。
主にビンボ臭いドラマや映画などで、
クラブのママや無計画に子供こさえた行き場のない女房などが、
しばしばため息と共に吐くコメントです。
「あたしだって霞食って生きてるわけじゃないし」
「おまんまの食い上げよ」などの定番セリフと同様に
「人間、まずメシありき」という人間の根本、原罪までを
見事に喝破した名言・至言のたぐいといえるでしょう。
わびしくも真実、厳しくも現実を表して見事。しかし「四の五の言わせない迫力」があり過ぎて
ひとり社会でいきる貧乏フリーランスの胸には
グッサグッサ事あるごとに突き刺さる文句でもあります。
なぜこんな訳のわからないことを突然述べているかというと、とある記事が私の目に留まったからでした。
歯医者の待ち時間に熟読した、某女性週刊誌の4色広告からです。
(以下、カギカッコ内は記事セリフママ)


「年齢を重ねていつまでも美しく! 栗原小巻さん愛用の純金化粧品・アヴォージュ」


トップ写真には、白いソファーにベージュのスーツ、モスグリーンのスカーフを首に巻いた栗原小巻さんが
悠然と微笑まれて、小首をかしげポーズを決めています。
美しくブローされたヘア、おでこや頬の美しさは映画『忍ぶ川』の公開がまるで昨日だったかのよう!


「強いライトを浴びる過酷な撮影でも、アヴォージュでケアしていれば肌がみずみずしく潤って
ダメージを受けても安心なんです」


なるほど、それほどまでに優れた化粧品なんですね! でも小巻さん……ひょっとして
その強いライトを浴びる撮影ってのは、この広告写真を撮影した際のことを仰ってるのでしょうか。
いや失礼、しかしながらそんなコメントの後では、白いソファにベージュのスーツというオフホワイトな
コーディネートも、「全身レフ板」に見えてくるから不思議です。


「女優にとってスキンケアは命です。歳をとっても、いつまでも美しさを維持できるアヴォージュシリーズは、
私にとって親友以上の存在!」


友情よりも美貌……そんな風に受け取ってしまう私は、ええ根性が腐っているのでしょう。
というか「栗原事務所サイドはこのゲラをちゃんとチェックしたのだろうか」という思いすら沸き起こります。
あまりにも直球でひねりのない文章。「自分を語る」ということをあまりに放棄した記号的な美容広告です。
そう、ここで思い出されるのが「食べていかなきゃならないもの……」というあのフレーズですね。
完全に「クライアント側の要求」が強く見え隠れする文章ですが、
私にはそこから「おまんまのために」という女優のうめきにも似た信念が感じられてしまいます。


これと同様の力学関係を示すパターンに健康食品広告池上季実子さん絶賛! 生命の果実『沙棘』」やら、
バラエティ番組「ザ・ジャッジEX」における嫁姑壮絶バトル再現フィルムに
「小川眞由美」が登場した事実、はたまたテレビ東京
「テレショップ」の案内役に岡田茉莉子が登場などの例も含まれます。
茉莉子があの名セリフ「でも、お高いんでしょう?」と言ったときの衝撃は忘れられません。
30年前なら間違いなく「こんな番組に出られるわけないじゃないッ!」
とブチ切れたであろうマンネリズムに茉莉子が服従……。
「もっと仕事を選んでほしい!」「スター時代の夢を壊さないで」などと、
若い頃なら私も思ったに違いありませんが、三十を越して分かりました。
「食べていかなきゃならないもの」……誰が彼女達を否定できましょうか。
もっともらしい言葉を書き綴っていますが、
実際は「この無常界に次はいったい誰が参戦してくるのか」という
下衆な興味が私にあることは否めません。見たいような見たくないような。
一部の女優の広告、というのはそんな「パンドラの箱」のような存在なのかもしれませんね。
自分でもどういうまとめか分かりませんが、今日はこの辺で。


●お知らせ

ブログランキングに登録。

1日1クリック↓プリーズ!

http://blog.with2.net/link.php?198815