京都・桂離宮にて −日本庭園の魅力−

宮内庁HPより

さて、最後の京都ネタ。
今回は、京都の友人が色々案内をしてくれたのだけど、
「旅人」から脱却できる楽しみ、ってモノを感じましたね
地元の人の行きつけの店に連れてってもらったり、
地元の人しか行かないような場所を教えてもらったり。
住んでいる人たちの「空気」に、一瞬まぎれることができたかのような、楽しい錯覚。
観光地って、どこ行ってもひとりだと「旅行の方ですか?」という展開になるけれど、
京都の人たちの普段のやり取りや会話を味わえて、贅沢なひとときを過ごしました。


さてそんな京都人・Aのおすすめで訪れたのが桂離宮
かつての後陽成天皇の弟君、八条宮初代智仁親王が別荘として建てた山荘だ。
まあいわゆる回遊式日本庭園と、数奇屋風の純日本家屋を愛でられる場所なわけです。
ここっていわゆる神社仏閣ではなく、宮内庁管轄の皇室財産なんですね。
そんなわけで拝観料とかはなし。しかしながら事前の観覧申し込みが必要で、
しかも観覧前に簡単な桂離宮についての「ご説明DVD」なんかを見なくてはならないのです。
そう、まさに懐かしの「社会見学」的プレイス。自由行動なんか「なし」ですよ
職員さんも随行します、常時いろいろと「ご説明」が付くというものものしさ。うーん漂うなあ「お勉強」感。
最初は「エーずいぶんかたっ苦しいなー、自由に見させてよー」とブーたれてましたが、
これがねえ、説明がなかなかに真面目とユーモアのツボを得ていて即妙、面白かった。
どんなに固くっても、やはり「西」ですね。「オチ」つけちゃう。くすぐり入れてくる。
一聴の価値アリ、でございました。ありがとう宮内庁


さて肝心の庭園。
様々な意匠と工夫が凝らされた建物の数々、いかにも計算された造りの植え込みや、
あえてあるがままにして野趣を愉しむ感じの林や夏草が混在するその見事さは、
いくら言葉を尽くしても、無駄ですね。特に苔むす石や木々のなまめかしいことといったらない。
また、この日は生憎の雨だったのですが、これが……よかったんですね本当に。
小ぬか雨やら矢のような雨やら、雨の降りようが変わると共に、離宮の表情もクルクルと変わっていく。
特にひととき霧雨が桂離宮全体を覆い、美しい目の前のパノラマが朧(おぼろ)がかった一瞬は忘れられない。
それはまるで牧谿もっけい)の墨絵のようで、現世とは思えぬ、ゆめまぼろしの世界に
足を踏み入れたような気持ちになった。深山幽谷、山紫水明、そんな言葉が自然、心にうかぶ。
優れた日本庭園というのは、どうしてかくも人工的でありながら、「仙境」の自然を思い起こさせるのだろう。


あと以前にも思ったんですがね、日本庭園の敷石、っていうんでしょうか、
人ひとりが乗れるぐらいの石が埋め込まれ、歩きづらくもなく歩きやすくもない歩幅で
敷かれてる石。「なんでこんな歩きにくいことするんだろう」って疑問だったんですが、
ひょっとしたら、足元に注意を呼び起こさせて、一番美しく景観が見えるところまで
周りの景色を見させないようにしてるんじゃないかな、と今回も思いました。
「あれ、歩きづらいな、滑らないようにしなきゃ」などと足元に気をつけてエッチラオッチラ歩いてて、
ふと敷石が途切れポイントに着いた瞬間顔を上げると、パーッと美しい光景が目の前に。
大体そういうポイントが日本庭園にはあるような気が。感動をより強くするテクニックなんじゃないでしょうかね。
そんなことをつらつら考えた桂離宮。予約してくれたAさん、ありがとうございました。