女の【対決!】映画 :『陽暉楼』(1983 東映)
私は強い女が好きだ。妄執の女、自我の強い女、
いがみ合う女、闘う女……こういった女たちが
実際に自分の身の回りにいたらたまったもんじゃないが、
強い女たちが活躍する映画を見るのは、私にとって最高の悦びのひとつである。
たまにブログでも、そんな女たちがはっちゃけまくる映画を紹介していきたい。なんのために。
今日はその第6回。
※また、「ミクシィ」というツールでも同様のコミュニティを開いています。
そちらはもっと様々にブランチがあって楽しめるかと思います。
もしやってる方がいたら見てみてください。
「女の【対決!】映画」http://mixi.jp/view_community.pl?id=278039
「女は競ってこそ華、負けて落ちれば泥」
(監督:五社英雄 出演:池上季実子、浅野温子、倍賞美津子、西川峰子、二宮さよ子、市毛良恵ほか)
嗚呼……これほどまでに対決する女たちの真髄を喝破した文句があるでしょうか。
これは今日ご紹介する映画『陽暉楼』のキャッチコピーにして
昭和という時代が生んだ最後の名文句です。この映画の存在意義はここのみ、といっても過言ではありません。
なぜならその内容は「惜しい」のひとことに尽きるからです。
これだけの人材を揃えながら、これだけの金を使いながら、
女たちのドラマに絞りきらず半端に男たちのドラマを挟んじゃったもんで
テンポが悪くなっちゃって「いがみ合い絡み合う女の同士のエゴ」が
まったく浮き彫りになっていません。ああ……欲張りすぎた!
当然女優たちも「いきみ」きれず、足は出てるのに頭が出ないような逆子状態となって苦しみもがき、
スッキリしきれなかった痛恨の映画、それが『陽暉楼』。
しかしながら捨てるにはあまりに惜しい「格闘」の数々がここにあります。
死産してしまった女優達への供養の意味も込めて、ここに弔い合戦をしてもらいましょう。
だからなんのために。
●池上季実子さん
主演の池上さん、ひとことで言ってソツのないお芝居です。
よく料理教室などで、「基本はしっかりしてるんだけど…もうひとつなんか足りない味ねえ」などと
失礼なことをほざく教官がいますが、まさにそんな感じ。
梨園の名門、坂東家の令嬢だけあって義太夫やら日本舞踊やらのシーンを「余裕よ」とばかり
見事にこなしていますが、【対決!】界において(どんなとこよ)一番大事な
「何しだすかわからない怖さ」にかけているのですね可哀想に。本当に余計なお世話でしょうが。
主演がはっちゃけきれない、という時点で思えばこの映画の命運は決まっていたのかもしれません。
とはいえ、この頃の池上さんは本当に大女優道まっしぐらでした。最近ではテレビ東京の2時間ドラマか
「サジー」なるアラブだかの健康食品の広告で見かけるぐらい。
「時間って残酷ね」という定番の文句を私はこの女優を見るにつれ思い出さずにはおれません。
●浅野温子さん
この写真をみて「あらッ? どうして『小林サッカー』の画がここに?」と
戸惑われる方も多いでしょうね。
いいえ、これは浅野先生が何を思ったか
着物姿でいきなりチャールストンを踊り狂いだす名場面の写真です。
ええ、もちろん大和撫子ですからズロースなんて野暮なものはいているはずもありません。
随分と気前のいいことをなさるもんです。 こんなシーンが本当にこの映画にはあるのですよ。
このぐらいはっちゃけないとトレンディ女優の看板は張れないんでしょうねえ。
実際には気取ってる一流芸者の池上季実子に対して「どうだい、こんな西洋の踊り踊れるかい?」と
挑発するシーンなのですが、あまりのインパクトにそういった意味はドコへやら
「なんなのこの女」と唖然としてしまうほかないクレージーっぷりです。
この映画のちょい前に公開された『獄門島』という映画では
ライバル・浅野ゆう子先生がそれはそれは見事な「キチガイ」を演じていました。触発されたのでしょうか。
また他のシーンではおっぱいひんむいて「アタシは女郎になるんだよ!」と訳の分からない啖呵きりまくっては
人に因縁ばっかりつけるというそんじょそこらのチンピラも真っ青のあらくれを
精一杯、丁寧に演じてらっしゃいます。
え? 何がなんだか分からない? すいませんね、じっくりこの映画を見たはずの私だって
どんな映画かよくわからないんですよ……。
●そんな二人の闘い
ただ単に「気取りやがって」という理由だけで温子は季実子にぶつかっていきます。ホント迷惑。
そんなくだらない喧嘩買わなきゃいいのに、一流芸者であるはずの季実子も
これ全力でぶつかっていきます。育ち悪。これこそがマリックなぞ及びもつかない
「五社マジック」というやつなのでしょうね。最初に温子がぶち切れるさい、
季実子がかぶってるカツラを「シュッポーーン」とはぎ取るところは、笑うところですよみなさん。
その後もことあるごとに憎み、いがみ合いますが、最後はスッキリ仲良しに。なんだよそれ。
●そんなふたりの写真
左:貞子だって逃げ出しそうです。この映画ハリウッドに見せたら絶対「CAN WE REMAKE?」と
興奮するに違いありません。して。
中:執拗に季実子の「ヘアー」を狙う温子。やり手の写真出版プロデューサーもビックリの腕前です。
右:そんなバケモノ同士の闘いを間近で見せられ恐怖する半玉役の仙道敦子。こんなもん見たから
「引退しよう」と思ったのかもしれませんね。
●倍賞美津子さん
ホッキョクグマが暴れてるようにもみえますが温泉で暴れているのが倍賞美津子さんです。
この映画では季実子が働く置屋の女将を演じてます。夜な夜な客に「飲も!」と言っては
金をむしりとっていたのでしょうね。嘘です。こんなネタいまどき誰が分かるのかなあ。
さて強烈なこのシーンは何かというと、自分の夫の浮気相手である佳那晃子さんを
殺しにやってきたところなんですねスナイパー美津子。
当然晃子レベルがかなうはずもなく圧勝です。相手が悪かったねえ。
というか主演をさしおいて一番の貫禄&暴れっぷりを美津子披露しちゃいます。
まずは冒頭、女将に借金を申し込む芸者の西川峰子をガツンと一発シメいれて見るものを驚かせます。
「てめえいいかげんにしろよ」と峰子をひと睨みで黙らせちゃうんですよ、
家が流されたときだって峰子あんなに衝撃は受けなかったんじゃないでしょうか。
そして「おかあさんアタシもう駄目」とヘタレ言う季実子をマッハで平手打ちしてヤキ入れ、
季実子本気で顔歪んで吹っ飛びます。あんな表情を女優がよく公開したものです、さすがの私も驚きました。
そしてこの温泉ファイト……美津子大地のマグマでも変換利用してんでしょうか。強すぎます。
●脇を固める女優陣 その1
1:まず西川“バイトミー”峰子先生。 信じられますかあなたこのとき25歳ですよ。
それでこの貫禄。なのにさしたる見せ場もなく「なんだよおめえ」と生意気な浅野温子に
ガンをつけるシーンぐらいが見もの。ニラミ役(『少女に何がおこったか』でいえば高木美保のポジション)に
峰子をつかうなんざ五社監督だけに許される贅沢というもの。今も語り草となる伝説的作品『吉原炎上』における
「噛んでー!」はそのごほうびなのかもしれませんね。誰も書いてること分からないような気が……。
公式ホームページ:『峰奴』http://www.mineyakko.com/ もどうぞご覧ください。
あまりにも適当な文字校正が笑えます。
2:「あたし、山本富士子さんに似てたんだけど、あんな美人と勝負してもしょうがないから三の線にしたの」と
自ら語るエピソードから意表をつく女優、園佳也子。 この映画の中では彼女が最も得意とする
世話焼きな図々しい市井のおばさんを楽々と演じていて喜劇ムードを盛り上げますが、
五社監督は本当に「ユーモア」の似合わない男で、まったく彼女を活かしきれていません。ああもったいない。
3:二宮さよ子&市毛良恵&熊谷真実
季実子の同僚芸者を演じるの3人ですが……全員合わせてもセリフ100文字も
ないんじゃないでしょうか。 あんまりです。見せ場はほぼゼロといって差し支えないでしょう。
五社が会いたかっただけなんじゃないでしょうか。 浅野温子演じるアバズレを睨むのみ、
そのために呼ばれたといっても過言ではありません。
まあそれだけ贅沢なことができた昭和のきらめき、といって差し支えないでしょう。
我ながらくだらないことをよくここまで書き連ねたものです。
コンだけ書いておいて最後にいいますが、
別にこの映画わざわざ借りてきてみなくてもいいですよ。笑
女の闘いが好きな人は必見ですけど、ね。
今日の曇天、台風の予感。ではみなさまよい一日を。
●映画詳細
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD17359/comment.html
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