斎藤と田中の表情に不覚にも涙 ・夏の高校野球

本当にお疲れさまでした

 市川右太衛門vs片岡千恵蔵というか……
勝新太郎vs市川雷蔵というか……我ながら例えが古すぎだとは思うが、
それほどまでに見事な「役者」がそろった高校野球夏の決勝戦だったと思う。
 まさに「両雄相並ぶ」という感じで、そのレベルを表すなら
歴史上このぐらいの人たちをもってこなければ充分に表現できないほどに、
若き高校生二人のエースは素晴らしかった。ホントに、感動した。


 勝者・早稲田実業斎藤佑樹は早くも人気沸騰、ワイドショーにも
早くから取り上げてられますが……すごいなあ唸ってしまう! 10代とは思えぬ
「精神バランス」がきっちり取れている顔なんだもの、もはや賢者の風格すら漂っている。
最近だと宇宙飛行士の野口聡一さんがこんな表情をしていた。プレッシャーも焦りも戸惑いもあるだろうに、
どこかでそれを美しく浄化してしまっているかのようなたたずまい。
彼のエピソードのひとつに、かつて同級生が「将来の目標」として「斎藤佑樹二世」と文集に書いた、
というものがあるが、自然納得できちゃうような面持ちであった。素晴らしかった。
 そして一方の駒場苫小牧のエース・田中将大も10代とは思えぬ風格、
頼りがいのある雰囲気がいかにも将来の大器という感じ。なんちゅうか……無理なくそういう感じが漂うのが凄い。
エースってときおり悲痛なまでのリーダー意識を感じていて苦しそうだったりするでしょう。
それが(あるんだろうけど)痛々しく思われず、「どんとこい」とナインを受け止めているような風情が
素晴らしいというほかない。敗北が決定したあと、キャプテンの本間だったろうか、
思わず泣き出してしまったその肩を、田中がただ何も言わずさすっている姿は……いやーもうねえ、
オジサン不覚にも泣いちゃいましたよ、あああ感動的だなあチクショウ!
何か、とても美しいものを今見ているのだなあ、と思ってしまった。スポーツというものだけが提供できる美的感興。
 そんな田中も閉会式の最後の最後、フト泣きそうな顔に一瞬なっていた。ああまだ子供なんだよなあ、
悔しかったろうなあ、無理ないよなあ、そうだよなあ、と思うとジーンとして、はい、また泣けました。
いつからこんなに涙もろくなってしまったのだろう……。
 彼らは閉会後人もまばらになってから、自分達だけでグラウンドで胴上げをしたという。
胴上げされた田中はそのとき泣いただろうか。素敵な話だ。


 とかく高校野球って重く、使命的な感じがすることが多いけど(「悲願の」とか「雪辱の」なーんて仰々しい
形容詞に彩られること多いもの)、今回の決勝戦は本当にすっきりとした「スポーツマンシップ」というものを
感じさせてくれたと思う。ただ一心に、ひとつの目標に向かってストイックに生きている人間の気持ちと、
「試合」というものの持つエンターテインメント性が見事に融合。野球に関して私は無知蒙昧、
こんなことを書けるような資格ありませんが、ついつい引き込まれてしまった今夏の高校野球だった。
 なんでもプロ野球の夜七時からの視聴率が6%台で、
高校野球の決勝戦は平均29.1%だったとか! なんなんだこの差は。
まあただ単に今のプロ界が面白い対戦を見せられてないからんだろうけども。
 まったくの門外漢だが言わせてもらう。
 おいプロ野球、いろんな問題があって最近の低迷を招いてるらしいけど、
こんな素晴らしきエースたちを汚いつまらない世界にまみれさせるんじゃねえぞ!  
 田中や斎藤がプロ選手になったとき、その世界を実際に目の前にしたとき、
彼らはどんなことを思うのだろうか。この夏の体験を超える人間的成長を感じさせてくれる世界なのだろうか。
そんな大人たちがそこには待っているだろうか。
 そこが私は知りたい。


●追記
どーでもいいですが早稲田実業っていつのまにか早稲田から国分寺へ引っ越して、
なおかつ共学になってたんですね、ビックリ。私は早稲田大学に通ったのだけれど
キャンパスの程近く実業の校舎があって、東京の私学高校とは思えないような
ジャガイモっぽい素朴な学生が多いなあと思っていた。
実業同様、早稲田の付属高校である練馬の早大学院に通った私からは、それが結構新鮮だった。
わが母校は制服も無く私服でチャラチャラした奴が多かったのに対して(まさに私だ)、
昔ながらの詰襟に、体育会の強豪が多い実業はいかにもバンカラという感じで、
同じガッコでこうも違うのかと思っていた。
どちらも同じ男子校だけれど、学院は日々コンパなどに興じているような感じでナンパだったが、
実業は男子校らしく遠慮の無い感じで、子供っぽくじゃれ合っているような大らかな雰囲気のある学校だった。
まあそれだけなのだけど、あそこはもうないのかと思うと月日を感じる。
都会の中の時代に残されたような昔っぽい高校の雰囲気が、私はなぜか好きだった。


●追記2
この試合の視聴率は23%だった。平日1時でこの数字、驚異的。


●追記3
と、こんな10代のスポーツマンもいればその裏でこういうニュースもあった。
「二男・大毅、相次ぐ“亀田バッシング”に真っ向反論!」
特に細かく書かないけど、これほどまでに対照的なニュースが並ぶとは……不思議にすごいなと思ってしまった。


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