ありきたりな事件? 「ひったくった相手の母に告白」

こんにちは、今発売中の「ChouChou」(角川書店)の
中村うさぎさんの連載エッセイにすっごく感心してしまっている
白央篤司です。いやー素晴らしい観点、見事な切り口。
くまぇり」「畠山鈴香」の二人を通じてその演劇的犯罪ぶりを
「女優ねえ……」というフレーズを持って論じられている。
軽い口ぶりだが見事だと思った。ぜひご一読を。
さて、今日は昨日のこんなニュースから。


●「昔あこがれていた女性にそっくりだった」
 使い古されたフレーズですが、まさに「事実は小説より奇なり」……しばし唖然としてしまいましたねこの事件。
昨日のヤフーニュースで驚かれた方も多かったのではないだろうか。以下記事より抜粋。

 

調べでは、T容疑者(33)は2日午後8時40分ごろ、市内を自転車で帰宅中の女性(22)の手提げバッグをひったくった上、翌3日午後、バッグの中の財布などを引き取りに現れた女性の母親(43)に交際を迫った疑い。
 T容疑者は「財布と携帯を拾った」とうそを書いたメモを女性の自宅に差し入れ、謝礼をだまし取ろうとしたが、待ち合わせ場所に現れた女性の母親に一目ぼれ。「昔の憧れの女性に似ていた」というのがその理由。同容疑者はその場で「付き合って下さい」と告白したが、母親が断ると「付き合わなければキャッシュカードなどを悪徳業者に渡す」などと交際を強要した。 
 


 多分世間は「行為のおマヌケさ加減」を笑ってるんだろうなあ。
「バッカだなあ」「ひえー変な人!」「そんなとこで接触するから捕まるんだよ」ってな感じで。
 でもね、私がビックラこいたのは「なんてエモーション振幅の激しい人間なんだッ!?」ということですね、
ちょっと感動的ですらあるもの。だってあなた「ひったくり」「詐欺」「ひとめ惚れ」「その場で告白」「恫喝」と
それぞれ普通に生きてたら滅多にないような「おおごと」ですよ、それをたった2日で……もう映画ですらかなわない。
 人間なら犯罪を思いつくことは時にあっても、実行に移すってのは相当な踏ん切りが必要なもんだろう。
ひとめ惚れも、まあ無くはないだろうが「告白」ってのは同様に結構な踏ん切りが必要でしょう。
その「タメ」がまーったくもって皆無。そんな無計画じゃうまくいくわけないっちゅーのに、
そのガムシャラ・パワーは、うーんスゴいというほかない。犯罪だろうが恋愛だろうが超人的な行動力。
もう「後先構わず」その瞬間生まれたリビドーに身を任せちゃう33歳。
 常識的に考えると
「いや、好きになったって言ってもひったくった相手のお母さんだよ?」
「ていうか相手人妻じゃん」「それにもし不倫できたとしても、自分がその娘にしたことバレたらどーすんの」
「だいたい悪徳業者って誰よ」
 などと突っ込みどころ満載、おのが欲望に身を任せても、行き詰まるのは見え見えなのにアイ・ドント・ケア。
「いーじゃんそうしたかったんだから!」
 彼は、そう答えるんじゃないだろうか。なんのためらいもなく。私にはそんな気がしてならない。
「なんで? 自分が信じたことして何が悪いわけ?」という理論で猛進していく考え方、
世の中の倫理観とか常識というものを信じず、自分だけの、自分達だけの「ルール」で暮らしていく行き方って
今の「メジャー」だものね。強ければ誰にもタメ口で、身内だけには敬語使うようなガキだってその一端だと思う。
それを容認する大人が大多数の状態だしね。
 この事件って実は突飛でも愚かの極致でも何でもなく、ほんの5年、10年先の犯罪を先取りした
「ありきたり」な事件の先駆けなのかもしれないと思った午前中、強い日差しと土砂降りが交差する晩夏。


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