美輪明宏という人、そしてスマップ

あなたのオーラの色はねぇ……

 いやー久々笑わせていただきました。
 フジ系列「SMAP×SMAP」、人気コーナービストロスマップにあの美輪明宏が来店、そのコーナー自体は別にいつもの美輪節で予定調和的な笑いだったが、香取慎吾演じる新キャラ「ニワさん」がもうおっかしくって。その名の通り美輪明宏のパロディなんだけど、結構なデキですよ。

 美輪明宏特有の震える声帯や口調を真似ているのも中々だが、なんといっても「ガタイ」が似てるのが、すごい。いや並んでみると全然美輪様のほうが小さいのだけど、慎吾ちゃんがムキムキ男体型そのままで一体感、というか美輪様と同一のオーラを醸し出すのが笑えますね。いかに美輪様が雄大で山の如き武田信玄オーラを表出しているかという逆説的証明のような、不思議な感じすら漂う。
 そして特筆すべきは思いっきり「剃り込み」の入った特注ヅラをかぶったことですね、喝采を送りたい。そう、あの「毛の後退感」なくしては今の美輪様の感じは出ないものねえ。私は今の美輪明宏を尊敬するポイントは、そこだ。
 毛も薄いしタプンタプンだしイッセイのプリーツプリーズ着てるけど「アタシは綺麗なのよっ、ゴージャスなのよッ!!」という気迫だけで周囲を納得させる「ひとり集団催眠」のようなあの寄りきり勝ち越し感。 慎吾ちゃんの「ニワさん」ショートコントもその「何がなんだか分からないけど平伏さなきゃいけない感じ」をうまくあしらっていた。誤解を恐れずに言うと、美輪様のある種「うさんくさい感じ」までも上手に料理した直球ながら上質のコントだったと思う。
(オーラを見てください、守護霊を調べてという女優と面談し、会食するという設定のコントだった) 
 私は美輪明宏という人を「ボーヴォワールという人が言ってたのよ。『女は女に生まれるのではない、女になるのだ』って。
それは生まれてから教育を受けてたしなみや作法を学んで、女らしい女になるってことなのよね」と発言したときから「まがい物」だと思っていた。人に説法をする立場の人間がそんな基本的間違いをしてはならないだろう、ハッタリだ、付け焼刃な知識だなあと、さしていい発音とも思えないフランス語や音程を無視した歌唱法からも思っていた。
 しかし最近、なんだかそんなことはどうでもいいような気になってきたのだ。先の発言のビッグ・ミステイクすら、なんだか些細なことに思えてきて、逆にそんなこと言ってる自分が小せえなあ、とすら思えて。
 ご自身も認めている通り、遊郭に育ち上野山で娼婦をしてきた人なのだ。それでなおかつ一流の人間に愛され、早々に性癖のカミウングアウトをして、時代に常に大きなアンチテーゼを常に投げかけてきた人なんだもの。
 「そんなのおっかしいわッ!」と思ったら直情的に意見をぶつけ、血が出ようが恥をかこうが
構わず猪突猛進してきたパワーの残光が今でも輝いているのだもの。そんな人になんか細かいことをどうこう言うのってのは野暮だなあ、と思うようになってきてしまった。
 「いーじゃないのボーヴォワールだってそーいう意味も込めたかもしれないわよッ!」って言われたら私、多分ギャハハとわらって「そーかもしれませんねえ」なーんて言っちゃいそうだもの。そういうチャームが、美輪明宏という芸能人の核になっていることは確かではないか。


 かつてアメリカの大女優でタルラ・バンクヘッドという人がいた。トルーマン大統領やチャーチル、作家のロレンスなど錚々たる男たちを魅了し、放埓な生活と発言でゴシップの女王的に君臨したハリウッド初期のモンスターだ。彼女はモラルの厳しい時代に浮気や不倫を繰り返したり、男をとっちめるような言動を繰り返したが、ちっとも大衆は彼女のことを嫌わなかったという。のちに「なぜあなたは愛されたと思うか?」というマスコミの質問に答えた彼女の言葉は「なぜなら私はずっと正直だったから」。「私は一度も嘘はついたことがない」と、いとも簡単に彼女は言ったそうだ。自分に嘘をつくぐらいならモラルや倫理観など無視して生きる、私を信じる! という彼女の姿勢は周囲からある種の尊敬と喝采をもって迎えられたのだとか。
 例えは長くなったが、美輪様に対する世間の(不思議なまでの)愛情はこーいうところにあるんでしょうね。ゲイだろうがお化けだろうがなんでもいい、私は私、そこを誤魔化したり目を背けたことなんてないわ、という姿勢はもーすべてを通り越して、「はい。お見事です」と言わざるを得ないんだよなー。


 いやー、でも感心するけどスマップという人たちは権威をからかうのが本当にうまい。もはや人気絶頂というスタンスから随分離れてきているのに「トップ」というイメージが崩れないのはなぜだ。大物と組む、主演を張る、という点では年齢相応になってきたこのユニットはまだまだ長く芸能界に君臨するのかもしれない。それは同時に下の成長を阻むという弊害もあるのだけれど。


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