映画『ヘンダーソン夫人の贈り物』

ディムの称号も当然ゲット!

<スタッフ&キャスト>
監督:スティーブン・フリアーズ
(『危険な関係』『グリフターズ』『マイ・ビューティフル・ランドレッド』)
脚本:マーティン・シャーマン
(『カーテンコール』『ベント』『永遠のマリア・カラス』)
出演:ジュディ・デンチボブ・ホスキンスケリー・ライリー、ウィル・ヤングほか


<あらすじ>
舞台は1930年代後半のイギリス、時はおりしも第2次大戦を迎えようかという頃合。大富豪の夫に先立たれたローラ(J・デンチ)は、余生をどう過ごすべくか途方にくれていたところ劇場の売り物件を見つける。何を思いついたのか早速購入した彼女はやり手の興行師(B・ホスキンス)を見つけて、劇場をオープンさせてしまう。最初のうちは収益も上がったものの次第に閑古鳥。そこで彼女は突然「ヌードショーを開きましょう!」と提案、驚く周囲の懸念もよそに、持ち前の行動力で政府筋まで説き伏せショーを大成功させるが、彼女がヌードと言い出したのには深いわけと切実な思いがあった……。



公開はまだまだ先ですが、ちょっとこの感想が風化しないうちに
書き留めちゃう。いやーーー面白かったですよ、ウェルメイドとはこーいう
作品を指すんでしょうね。103分という適当な尺、それでいて浅くならない人物描写、
戦争を背景にしているからといって重く、クサくなりすぎず、さりとて軽薄でもなく。
バランス感覚がヒッジョーにいい作品でしたね。それって監督の洗練されたセンスの証明に他ならない。


●必殺「はぶきテク」は健在!
 もう21年前の映画ということに結構な衝撃を覚えるが(年とるわけだ……)
『マイ・ビューティフル・ランドレッド』の頃からこの監督の「はぶき」のセンスは素晴らしかった。
必要なものまでもあえてカットし、余情を生ませる。客に想像させる。
見せたいものを、あえて隠すという手法は、日本で言うなら小津安二郎のセンスにだって通じるものじゃなかろうか。
物語のキモとなるテーマが「戦争で子供を失った」ということなんだけど、
そういうのって凡才ならば、タップリ見せて狙ってクサくまとめてしまいがちなものだ。
ところがこの監督はそんなことはしない。逸らして省いてトントンとテンポ良く進めていってしまう。
「え、もうちょっとタップリやってもいいんじゃないの?」と客が思うマックスのところで
ドーンとドラマティックに醍醐味シーンを観せるやり方……小憎らしいぐらい巧いですよ。
(あ、世界の中心で助けてーとか叫ぶのが好きでハンカチ用意して
劇場に行く人は向かないかも。はいイヤミです。笑)

 今回もお得意の「はぶきテク」で、戦争による恋愛のすれ違いや、死別の悲しみを実に手際よく料理していた。
自分のつくったものって中々切れないもんですよ。その職人主義、すっごいなあ。うまいなあ。


●イキのいい女優、ジュディ・デンチ72歳
 そしてなんといっても主演女優、ジュディ・デンチの素晴らしさを堪能する映画でもあるわけですね。
年齢を書くのも失礼な話だが、おんとし72歳、まっだまだ元気で女としての可愛らしさも「色」も表現してしまう。
 常々感じていることだが、この世の中で一番強いのは、
「年とった金持ちの女」だと思っている。ジュディが演じるのはまさにそんな女、
しかも大富豪の未亡人で自由になるお金は無尽蔵。敵なし悩みなし、やりたい放題の存在だが、
そこにちゃんと可愛らしさや、真っすぐゆえの無邪気さのようなものをプラスしてくる。
少なからず「おばあちゃん」世代まで生きてきた、芸能界に残ってきた女優さんはそういった
「世知」「年輪の深み」を表出することに長けているのだけれど、
主演を張る「華」というものを併せ持っている人は少ない。
ジュディはまさにそんな、和ものっぽい言葉で言えば「座長役者」の貫禄と大役を果たしていて
爽快この上ないんだなあ! なにしろ劇中、このバアさんは1930年代だというのに
自家用飛行機を持っていて操縦させてフランスまで行くわ、政府高官を子ども扱いして
「うちの劇場でプッシー見せちゃダメ?」と聞くわ、民衆の前で大演説をぶって
自分の主張を通しちゃうような人物なのだ。そんな漫画的キャラクターを実に自在に、
説得力を持ったひとりの人間として彼女は浮き彫りにした。大向こうをかけたくなるような、いい芝居だったと思う。
 脇役も適演。美人ダンサー役にはケリー・ライリージョニー・デップ主演の『リバティーン』で
いい演技を見せていた)。この人可愛いんだけどフルメイクすると時折
ジョン・キャメロン・ミッチェル」入るんですよね(笑)。アングリー・ケリー。
ウィル・ヤングは自身のセクシャリティそのままにゲイのシンガー役で華を添えていいナンバーを披露してました。
スタンダードの古曲「オール・ザ・シングス・ユー・アー」を歌うシーンは泣けますよ。
 このジュディ演じるヘンダーソン夫人は実在の人物だったと言うから驚く。
そのことにも触れたかったが、長くなるのでこれで。またいつか12月手前にでもネタに出来ればいいな。


●追記
ジュディはこの作品で2005年度のアカデミーとゴールデングローブ両賞の主演女優賞にノミネート。至極納得。


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