「週刊現代・きのこ特集」&「酉の市にて」

hakuouatsushi2006-11-05

最初にお知らせ
今日(6日)発売の週刊現代講談社)のなかでグルメ特集記事の取材・文章を担当しました。
カラーグラビアで「秋のきのこ料理特集」美味しそうな写真満載、関東と京都・大阪のうまいきのこを食わせる名店を存分にお届けします。和食からフレンチまでいろいろあるよ。ぜひお手に取ってみてくださいね。


●花園神社にのこる非日常 酉の市にて


 知る人ぞ知るかの世界……西原理恵子の作品や古くはトッド・ブラウニングから近年はデヴィッド・リンチに至るまで、世界の鬼才が描いてきた不可思議な世界……とうとう私、白央篤司もその扉を開いてしまいました! はい、何をのっけからオーバーに語っているのかといいますと、新宿・花園神社の見世物小屋に行ってきたというただそれだけのことですね。あーあー「戻る」とかクリックしないでお願いだから。そう、はや11月となって世間では酉の市なんかやってるわけです、毎年の恒例行事、今年も行ってまいりましたがちょっと今回はある挑戦に。


 新宿伊勢丹の真裏にあるこの神社、毎年酉の市はもんのすごい人手、賑やかなことこの上なし。大都会のただ中、いきなり突然縁日気分で楽しいったらありゃあしない。テキヤ、っていうんですかね屋台がワンサカ出て、仮設テントの下には一杯飲み屋がひしめき合う。蛤やら伊勢海老、帆立なんかを網焼きで売る店もあれば、定番・焼き鳥、おでんにモツ煮などいろんなつまみが溢れんばかり。最近の屋台はすごいですよ、チヂミだのチャプチェだの韓国惣菜や、ケバブなんかの民族料理屋台まであってバラエティ豊か。見てるだけで楽しくそぞろ歩きにはもってこい。うーん、なんかつまらないメトロフリーペーパーみたいな文章ですね、失礼。
 本題。この花園神社・出店の名物の中に「見世物小屋」っつーのがあるんですね、ご覧くださいトップ画像のオドロオドロしさ……ぼやけてよく分かりませんが双頭の赤ちゃんやら大蛇を巻きつけた美女やらの、劇画的なイラストが所狭しと貼られた入り口は妖しさ炸裂、もうねー私脳裏に映画『エレファントマン』やら『フリークス』の世界なんか思い出しちゃったりして実は内心、結構ビビってました。入るべきか入らざるべきか……。
 よく語られるように見世物、なんてのは大体こけおどしで「丈六尺の大イタチだよ!」なんて口上につられて中に入れば、六尺大の大きい板に血のりがつけてあるだけで「これがホントの大板血」なーんてオチだったりするというのが定説ですが……はい、ライターですもの入場料800円払って見聞を広めてきましたとも。そこで繰り広げられた珍奇狂乱の数々とはッ!


 いやまぁ……内容について詳らかにするのは野暮というものでしょう。言っちゃ終わりだものね。「大板血」的こけおどしもあれば、身がすくむような瞬間も確かにあった。ちゃーんと体張ってる人達見られてまぁ祭りの余興、800円の価値は充分にあったというもの。(うーん全部ボカすのもあんまり何なんでちょっと小見出しだけでも。「驚異! 何十本もの燃えさかるロウソクから熱きロウをすべて口に含む老女!」とか「震撼! 生の蛇を口で食いちぎり賞味する美女の口に滴る血!!」だの「全長20メートルもの大蛇が目の前10センチに! あなたはこの恐怖に耐えられるか!?」こんな感じの出し物です、いやマジで)
 しかしながら一番ドラマティックだったのは大蛇でも炎でもなく、みんな綺麗だったであろうような顔立ちのおばさま座員(ちなみにスタッフは全員女、20代から60代といった風情であった)、その姿だった。彼女達がどんな人生を歩み、どうしてここに流れ着いたのだろうか、そしてどんな気持ちでこの板の上にいるのだろうか。そんなフッと見え隠れするニュアンスが私にはドラマティックに感じられた。嫌々こなしてる風でもないけれど、嬉々として見世物になっている悦びを感じてる風でもない。売られてきたもの独得の世捨て感というのもなく、また人に見られることそれ自体がたまらなく好き、という人独得の躁感も感じられず、ただ単に「こなしてます感」が漂っていて、なんとも不思議な空間であった。まさに古くは越後獅子から綿々と続く日本伝来の「みせもの」という情感を感じた、そんな気がする。ホントか。
祭り、ってのは本来楽しいだけのときじゃないんだろうなあ。神秘とか異形とか超ハイとか「非日常」とリンクするときなんだよね。それの名残がこんな空間なのかもしれない。なんでも見世物小屋商売は現在日本にここだけ、唯一のユニットだそうです。毎年商売がえの危機に陥ってるんだとか、二の酉、三の酉が最後の公演になるかもですよ。


 明日は今日の夜観てきたジョアン・ジルベルトの公演について書いてみます。すっごくよかった……はぁーまだ余韻に浸ってます。おやすみなさい。


●健忘なる己のための一週間の記録
ちょっと自分のために行動記録、日曜日の恒例にしたいと思います。
月:通販記事締め切り、ガーッと一日家にこもって書く。食事は宅配ピザ、2回に分けて食べる。不健康だ……。
火:ゴマブックスからギャラ入り、すぐに家賃振込み。あると使っちゃうからなあ。体は疲れてるのに寝付けないのでビデオを見る。
水:朝10時に新宿で打ち合わせ、自転車でかっ飛ばす。気持ちいいなあ、帰りに新宿御苑の行きつけ「タベルナ・ロッサーナ」にてパスタランチ。
木:13時から東銀座にて『デート・ウィズ・ドリュー』の試写。サイコー! めっちゃくちゃ面白い。これについてはジックリ書く。渋谷で打ち合わせ、帰りに「ヴィノスやまざき」にてグラスワイン2杯。RM手作りのシャンパーニュ・モンマルトがいい意味でとても分かりやすくおいしい……これで一本3000円を切っているのだ、やまざきの偉いところ。ボーっとカウンターでたたずむ。
金:仲良しTとその彼女と花園神社の酉の市、一の酉の前夜祭に行く。見世物小屋やら屋台をひやかし、帰りは3丁目の行きつけ居酒屋「山葵」に。


●今週見たビデオ・本
1:『花園の迷宮』わっけわからない……すごすぎる……評判はかねてより聞いていたがここまでとは(笑)。シュルレアリズムとかヌーベルヴァーグとか束になっても敵わないね、難解とはこういうものを指すのかもしれない。違う。
2:『オンリー・ザ・ロンリー』おっそろしく子離れできない母と親離れできない子供の話。やがて好きな子が出来て自立、という平凡な筋をそれなりに見せる。アンソニー・クインモーリン・オハラというハリウッド黄金時代の二人のキスシーンが感慨深いなあ。
3:『お国と五平』成瀬巳喜男の時代劇、主演は木暮実千代大谷友右衛門(今の京屋)。木暮の演技者としての実力を堪能、色気というか形で決まる伝統美とモダニズムが共存する資質に唸る。
4:『再会の時』ローレンス・カスダン監督お得意の群像劇だが内向的過ぎてドラマが盛り上がらない。グレン・クローズがさすがの存在感。


●お知らせ
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