映画『デート・ウィズ・ドリュー』
嬉しい。
何が嬉しいか。それは久々に
「あー面白かったかなぁ!」とおもえる映画に出会ったからです。
あっはははなーんのヒネリもない感想ですね、こんなんでいいのか映画ライター。
いやーでもこの映画はね、もんのすごい「大直球」な映画なんですよ。
作り手のまーーーーーーっすぐな気持ちがビンビン伝わってくる。
なんのてらいも見栄もゴマカシもない純粋な映画に対する気持ちが伝わってくるんだなあ。
だからこちらも凝った文章ではなく、監督・製作の気持ちに応じて素直に
「わー面白かったぁ!」と応えたくなっちゃうような映画なのだ。どういうことか。
主人公の青年・ブライアンはもうドリュー・バリモアが大好きで大好きで仕方ないのだ。
彼がある日とあるクイズ番組で1100ドル(今日のレートで約13万円ぐらい)ゲットする。
そして考える。「これで一ヶ月暮らせる……でもそしたら使って終わり……ならば!」
映画学校に通ってた彼は「一般人の僕がどうやったらドリューに会えるか、
そのトライを映画にして評判になれば会えるかもしれない! そうだそうしよう!!」という
なんともスットンキョウで唐突な思いつきにとりつかれる。
期間を30日と定めて「ドリューとデートする」という最終目的のもと、ひたすらに突っ走っていく彼……。
すんごい行動力。映画づくりを決めたその日のうちにビデオを購入、
なーんの計画も立ててないのに「さあどうしようか」みたいな作戦会議から収録は開始。
ひたすらこれ自分を妄信して盲目的に「ドリューに会うんだーッ!」というゴールに向けて
つっぱ走っリ続ける……。彼のやってることと来たら
「映画関係の友達の友達をたずねていけばいつかはドリューの知り合いに会えるはずだッ!!」という
何の根拠もない行動の繰り返しなんだもの、アテも保証もないのにネバー・ギヴアップ。リピート・チャレンジーズ。
もうねー、私は小野道風じゃないけど「柳の枝に一生懸命跳びつこうとしている蛙の図」なんて
久々に思い出しちゃいましたよ。なんていじましい……そしてなんと(思いっきり死語でいきますけど)
「ピュアなハート」であることか……。
そう、時代錯誤なんだなあ、とってもやってることアナクロ。でも、それがなんとも心地よいのだ!
多分彼のことを「少年の心を忘れない」などとイージーに紹介するメディアが多いと思う。
でもね、ちょっと違う気がした。この人のそれは思いっきり昭和30年代的な兄ちゃんの
一途な「慕情」というものだと思う。サユリストとかコマキストとか称された一連の人たちのような
精神に似てるのではないだろうか。まあもちろんドリューを神格化、とかそーいうんじゃないのだけれど。
主人公であるブライアンの心にちょっとでも陰りとか曇りがあれば、気持ち悪い映画になってしまったと思う。
はっきりいって彼、グッドルッキングでもないし職もなけりゃ金もない。
なのにこの人、本当にちょっとばかりの「いじけ」も「すね」も感じられないんだなあ、
そう、卑屈とか矮小ということからまったく隔絶されたハートを持ってるんですね。
そりゃいろいろ羨んだり悔しがったりしてるでしょうが、そんな汚いものをおのずから浄化させる
高い精神性を宿してるんだろうなあ、ってことが観てるとよーくわかる。
作中、彼は「夢はあきらめなければ絶対かなうはずだー!」というのだけれど、こんなセリフ
似合う人もひっさしぶりに観ましたね。「そうだねえ、そうだよねえ」とうなずいてあげたくなるもの。
信じちゃうもんね。ちょっとでも嘘や戸惑いがある人が言ったら「ケッ」とか
「バカじゃないの」「世間知らず」と総攻撃を受けちゃうようなセリフだもんなあ。
そんな彼の人柄なんだろう、「彼の夢をかなえてやろうぜ」と親友二人がこれまた一生懸命サポートするわ、
いろんな人と出会えるわ(懐かしのコリー・フェルドマンにはビックリ! 昔よりいい男になってた)、
いろんな人が集まってくるわ……30日間の間にほんっとにいろんなことが次々とおきてくる。
ちっとも退屈せずに映画を見切ったのはホント久しぶりだ。
「そりゃドリューに会いたいけれど、ストーキングにはなりたくない」というブライアンのスタンスも立派。
パパラッチ的に会うんじゃなくて、きちんと友人の紹介ということで会って、
デートがダメならダメで本人に「NO」と言われたい、という基本姿勢……なんだか学級上の先輩に恋した
初々しい新入生みたいじゃないですか(笑)、何度もいいますが30男ですけどね。
知らず知らず彼を応援してしまいたくなるようなこの気持ち。
「ドリューを紹介してくれる人を求めて」さまよう西遊記のようなまさに人間関係スペクタクル・ファンタジー、
私はものスッごく楽しんだ。彼が苦節30日の末ドリューに会えるかどうか、祈るような気持ちになりますよ。
お正月公開とか。おめでたい新年にピッタリな映画だと思う。
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