女の【対決!】映画・第9回『女系家族』(1963年 大映)

必見!

私は強い女が好きだ。妄執の女、自我の強い女、いがみ合う女、闘う女……こういった女たちが
実際に自分の身の回りにいたらたまったもんじゃないが、
強い女たちが活躍する映画を見るのは、私にとって最高の悦びのひとつである。
たまにブログでも、そんな女たちがはっちゃけまくる映画を紹介していきたい。
いったいなんのために。今日はその第9回!


※また、「ミクシィ」というツールでも同様のコミュニティを開いています。

そちらはもっと様々にブランチがあって楽しめるかと思います。

もしやってる方がいたら見てみてください。

「女の【対決!】映画」http://mixi.jp/view_community.pl?id=278039


■■『女系家族』(1963 大映
監督:三隅研次 脚本:依田義賢 撮影:宮川一夫 出演:京マチ子若尾文子鳳八千代
高田美和、田宮二郎中村鴈治郎ほか


 映画史的にはまったく無視、というか
取り立てて注目されていない作品なのかもしれません。京マチ子若尾文子主演という豪華さながら、
大映のプログラムピクチャーの一環でしかないような扱われ方なんですよ。
しかし! 女の【対決!】映画的にはまさに「必見中の必見作」であり、
見事なまでの女の業を描ききった傑作に他なりません。
最近原作が米子、失礼、米倉涼子さん主演によってドラマ化されたのをきっかけに本作もDVD化されたものの、
セルオンリーなので紹介しかねていましたが、このたびめでたくレンタル開始となりました。
ああ、嬉しい! この機会を逃してはなりません。
久々にトピックとして紹介してみましょう。


●あらすじ
話はメチャクチャ単純です。
1:大金持ちのおとっつあんが死ぬ
この人大阪の大商人でいきなり冒頭で臨終間際、死に床には娘3人が今か今かと
にじり寄っておとっつあんの今際を見つめています。こんなシチュエーションどっかで見たことはありませんか?
そう、懸命な読者さんはならすぐお分かりでしょう。あの『犬神家の一族』にソックリなのですね、
まがまがしい映画の王道プロローグとでもいうのでしょうか。
当然みんなの気にすることはただひとつ!
「お父様、ご遺言は!?」
せめて誰か「大丈夫パパン?」のひとことでも言ってあげれないもんでしょうか。ひど過ぎます。


2:あらぬ財産相続人登場!

 この3姉妹に扮するのは日本が誇るヴィーナス女優(『赤線地帯』参照)京マチ子さん、
そして最近では影がすっかり薄くなった鳳八千代さん、高田美和さんの3人です。
私も鳳といえばケイスケぐらいしかしりませんが、三女の高田美和さん……うわー古い……『軽井沢夫人』なんて
覚えてらっしゃる方いるんでしょうか。そう、かまきり夫人、デヴィ夫人に続き「日本三大夫人」の
ひとりでらっしゃったあの方ですね。ちなみにおとっつあんは
高田浩吉」この方もすっかり過去の人になってしまいました。
ああどうでもいい。この3姉妹がみんながみんな「あたしが一番ガッポリ貰ってったるでえ!」とパパの鎮魂も
そっちのけで欲ボケに走りまくります。そこに登場するのが隠し妾の若尾文子! 
まさに寝耳に水の3人は色めき立ちます。自分で書いててなんですが「色めき立つ」って
どういう心理状態なんでしょうね。一度ぐらい私のような
平凡な人生でもそんな興奮状態味わってみたいものです。


3:邪魔者は消せ

 いやまさかホントに殺し屋差し向けたりはしません。
「まあ面倒くさくならない程度に金渡して去んでもらお」と3姉妹は画策します。
「あたしは家もらってるだけで結構です」と最盛期の美貌をたたえた若尾は
しおらしく言ってるというのに「ほんまかいなッ!」と頭っから信用しません。
まあその予感は後に「ねるとん紅鯨団」も真っ青の大ドンデン返しとなって現実のものとなるのですが。
それはあとのお楽しみとして、いやぁ……なーんか若尾が気に入らない3姉妹、あの手この手で文子を
しばくしばく……これはひょっとして「レズ視点における団鬼六も真っ青のSM映画なのかしら……」と見るものに
思わせるようなキッついプレイがこれでもかと出てまいります。
いや、直接的に殴るけるするわけじゃないんですね、
そこが昔の人の恐ろしいところ。


4:HOW TO SHIBAKU

 船場のとうさん(お嬢さん)たちはやることが違いますね、
これを読んでいる人で「殺してやりたいわアイツ……」と思う人がいる方は
「いけずの手本」として是非ご覧ください。ゾッとすることこの上ありません。この3姉妹には
恐ろしいことに関西を代表する名女優、「浪花千栄子」が後見人のような役でついていました。
馬力でいうとララミー牧場OK牧場全頭分、マグマでいえばキラウェア全部、東京電力でいえば
世田谷と杉並、そして練馬がすべて「オール電化」になっても
ひとりでタービン回せるぐらいの実力とパワーを持った人です。まあすごい勢いでしばくしばく。
若尾が本宅に挨拶に来れば「そのお腹はなんだす!」と、どうみても普通の腹なのに
「あての目は誤魔化されまへんで!」と「ターミネーターのアイスコープかお前は!」というほどの
眼力で若尾の妊娠を発見、なんと若尾の羽織をブチ破いてお腹改めを実行します。ほとんど大久保清レベルの
レイプ魔的行動力です。いきなり服破いて「身ごもってまんな!」と喝破。超ベテランの産科医だって
できないような芸当を千栄子……ノーベル医学賞ものです。
その後も妾宅にいる若尾を奇襲、「無事にややこが育ってるかどうかチェックしたるわッ!」と
本当に余計なお世話で乗り込んできては「公開面前触診」を
強要しようとしたり(さすがにそんな屈辱は涙ながらに若尾も拒否、「あんたたちは鬼や!」とかなんとか
言ってたような……ていうか仰るとおりです。鬼だって尻尾巻いて浪花先生からは逃げていくでしょう)
1円単位まで財産分与を勘定してゴネまくったり、
もうやることなすこと今の女優では束になったって敵いません。
なんたって淡島千景さんが教えを乞うたことすらある
女優さんですからね、今の芸能界で敵う人なんかいやしないのです。


5:THE OTHERS
 思いっきりはしょってますが、このストーリー、当主逝去のどさくさにまぎれて思いっきり
財産ガメてやろうと企む大番頭・中村鴈治郎の暗躍やら、京マチ子に取り入ってなんとか
財産のおこぼれを狙おうとする田宮二郎など、女の闘い同様に男の虎視眈々たる欲のうずまきも同時に描いてて
秀逸この上ありません。北林谷栄中村鴈治郎の「しっぽりしたシーン」
という「いらない」としかいいようのないというか
ジジ専ババ専にはたまらない好事家のためのシーンも満載!
(ホントか) そして最後にはいじめ抜かれた若尾の
痛快な大逆転が待っています。『夜の蝶』のような大映テイストが
好きな方なら必見ではないでしょうか。
 いがみ合いだまし合う、これ全編そんなことばっかりです。
芸達者たちの狸と狐のばかし合い、
もうここまで濃いメンツによる西の香り漂う作品は絶対につくれないでしょう。見逃してはいけない、
素晴らしき女の【対決!】が、ここにあります。京マチ子
若尾ファンの方なら見て損はないと思いますよ、ではまたいつか。


●お知らせ

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