アニタ・オデイとベティ・カムデン、ふたりの音楽家逝く
うわー……あちゃー……とひとり力なくビックリしてしまう。まったくなんという日なんだろう。24日にはフランスの名優、フィリップ・ノワレさんが亡くなってしまい、そして大好きなアメリカの白人ジャズ・ヴォーカリスト、アニタ・オデイさんも逝かれてしまったと思ったら、傑作映画『雨に唄えば』の脚本家で知られるベティ・カムデンさんまで亡くなってしまった。みんなそれぞれに功をなした方で高齢とはいえど、なんだか寂しいものですね。
今日は興味る人少ないでしょうが、ちょっとこの辺のことを。
まずこの日本では一番知られていないと思うカムデンさんだが、ミュージカルの佳作『踊る大紐育』とかシャーリー・マックレーンの知られざるコメディ『なんという生き方!』なんかの脚本・脚色も手がけた人で、ミュージカルのみならずペーソスある暖かな作品に関わってきた人だったと思う。『踊る大紐育』のベースとなった舞台、『On the town』の中には私の大好きなナンバー、「some other time」「lucky to be me」(作曲はあのレナード・バーンスタインだ!)という2つの名曲があるのだけれど、これらもアドルフ・グリーンという方との共作で作詞を手がけられていた。
(ちなみにこの2曲はアイリーン・クラールという歌手の大傑作アルバム、『Where is love?』という作品に収録されている。このアルバム自体がヒジョーに感動的なバラッド集なので、ジャズ・ヴォーカル・ファンならぜひ聴いてみて欲しい)
89歳だから大往生なのかもしれません。御冥福をお祈りします。
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さてジャズ・ヴォーカルといえばアニタ・オデイさんがとうとう逝かれてしまった。晩年のアルバムはほっとんどもうこれ「執念」で出ない声を絞り出すかのように歌ってらしたが……結構長生きしたなあ。なんせ噂では酒もタバコもガンガンやられてえっらい姉御肌のお方だったよう。報道でも「アルコール依存症に苦しみ……」なんて記述があったがその最後は安らかであっただろうか。
この方特に日本のうるさがたの玄人筋にウケたようで、ジャズの本など読むとおじさん評論家連がやれ「アニタ姐さん」だの「彼女のジャズは『小唄』的でもあって……」だの、粋でアダでまるで「ジャズ芸者」のような見方をときにされているのが、なんともおかしく、微笑ましかった。それだけ大人の感覚を持ったクールな歌唱が素敵な人だった。また一方では「ホーンライク」と言われる奔放でスリリングなテンポを操り、フェイクたっぷりな即興歌唱は天才的レベルに達していた人だと思う。白人ではまず間違いなくスキャットは一番巧かったんじゃないだろうか。最盛期、名門レーベル「ヴァーヴ」での一連の作品はいつ聴いても……古い言い方だがシビれてしまう。私は「スイング」という言葉の意味を彼女のフレージングではじめて分かったような気さえするほどだ。不安定な音程と大きいとはいえない声量で、最初に聞いたときは「なんだこのヘタクソは?」と思ったが大間違い、手に汗握るコーフンを歌唱で私に与えてくれた、数少ない一人だ。お疲れ様でした、ありがとうございました。
今日は久しぶりにCDをひっくり返して二人の歌を聞いてみよう。
<アニタ・オデイおすすめCD>
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聴いてるとサイコーにリラックスしちゃうねえ。
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