「大エルミタージュ美術館展」本末転倒なり

この照明がまあ最悪

 いや……美術品に罪はない。そりゃあもちろんいいものも素敵なものもあった。だけど、だけど……なんでこんなもんに行ってしまったのだろう!! ああ……もう結構な悔しさ、くちおしさ。もう心は「魔太郎」状態に。ウラミハラサデオクベキカ(@藤子)。

 お恥ずかしながら東京都美術館って初めてだったんですが、早く取り壊すべきですね。おおよそ美しきものを愛でるような環境ではない。地方の古い公民館3つ4つ合わせ付けてレンガで覆っただけのような、情緒もヘッタクレもない作りで、色褪せたコンクリートの壁、昭和の中学校の視聴覚室みたいな内装、ところどころに灯る蛍光灯、順路から丸見えのトイレ……ああ、ロシア人が見たら「国辱!」と怒りだすんじゃなかろうか!? 俺は雪舟光琳が外国でキッタないところに展示されてたら怒るぞ!
 いや、百歩譲って内装はまだ許そう。血税ですもんね、そうそう簡単に取り替えたり建て直すっちゅうわけにもいかんでしょうしね。まだまだ使えるんだしね。だけどさあ、展示が劣悪この上ないんですよ、なーんにも考えてないような照明と配置、もう学芸員の質の悪さというかやる気のなさというか……美しいものに対する尊敬と感動がまーったく伝わってこない。ふざけちゃあいけない。
 美術展のみどころというのは、展示物それ自身の質はもちろんだけれど、見せる側の熱量とか展覧会にかける意気込み、というところにもあるのだ。収集物に対する学芸員たちの美的興奮、それがつまっている展覧会は間違いなく成功する。「美しいものをより美しく、最高の状態で見せたい!」「ほらぁ、これ美しいでしょ、素ッ晴らしいでしょ!?」という自信というか誇りというか、「美しいものに触れた人の心」という、その心に触れることもまた喜びなのだ。 それがこの美術展にはまーったく感じられなかった。作品に対する愛情のないライティング、ゆとりのない展示間隔、寒々しい場内の照明……。「大エルミタージュ美術館」を謳っておきながらこのプレゼンテーション……もうね、頭ン中ずーっと「本末転倒、本末転倒……」ってな言葉が回ってましたね、私(笑)。

 いやまあ最初にも書いたが、美術品にゃあ罪はないんですけどね。そうだなあ、ターナーに影響を与えたというクロード・ロランという人の絵や、あのポンパドール夫人の絵画教師だったというフランソワ・ブーシェゴッホも絶賛していたというフェルディナント・ハイルブートの作品なんかはじっつに興味深く観ました。ルイ15世の妾であった夫人の先生ねえ、歴史が目の前あるんだなあ……ってな気分になりましたし、ハイルブートの作品は「永遠と一瞬」というよく語られる芸術的テーマを描き出していて本当に見事。あと、私的に強く心に残ったのはアルフォンス・マリー・ド・ヌーヴィルという人の作品ですね。この人ジュール・ヴェルヌ(「月世界旅行」「海底2万里」の作者だ!)の挿絵を担当していた人らしいんだけど、それもかくやってな感じでねえ、いーんですよペーソスがあるんですよ。「上官のご馳走」というタイトルの絵で、二人の軍人が描かれているんだけど、それが思いっきり味のあるオッサン二人で、なんだか見ていてホノボノしてしまう。うーん日本人にたとえると懐かしの殿山泰司山茶花究みたい。誰も分からないでしょうが。これが観れてまあ良かったかなあ……そうだね、よしとしましょう。まあドーしても興味のあるという人はどうぞ。写真でしか知らないが、あの壮麗なエルミタージュ美術館はひょっとしたらそれ自身が一番の美術品なのかもしれない。いつか、行ってみせる。
 24日まで。平日のお昼頃行きましたが、まあすんごい人でした。覚悟して。


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