村主章枝「ボレロ」の演技に思う北島マヤ性

hakuouatsushi2006-12-09

 かなり旧聞に属してしまうネタで恐縮ですが、いやーシビれましたハクオー、ひっさびさにフィギュアで感動。素ッ晴らしかったんですねNHK杯での村主章枝選手、ラヴェルの「ボレロ」を使ったプログラムには思わず鳥肌が立ちました。先日のNHK杯は思いっきり見逃していたんですが、今日の夕方やっていた「総集編」でその演技に触れることができて思わずコーフン! 確かにジャンプの難易度という点では浅田真央選手のほうが優れていたのかもしれないけれど、単純にいってアーティスティックな面から見れば、村主さんの演技は群を抜いていたのではないだろうか。

 このボレロという曲は、同じようなメロディが何度もリフレインしてはそのスケールを増して、どんどん曲自体の容積が大きくなっていくようなうなつくりになっている。最初に演奏されるメイン・テーマを奏でるのはヴァイオリンだけだとしたら、次にはヴィオラ、次はチェロも、バスも、そして管楽器もそれに続き膨れ上がっていくような……次第に曲全体のスケールはうねるように大きくなり、巨大な津波のようになって華々しくラストを飾る、そんなドラマティックな曲なのだ。
 その曲自体のドラマ性みたいなものと、村主章枝選手独得の持ち味が非常にマッチしていたと思う。どんどん盛り上がっていく主題、音楽に負けないだけの緩急を実によく考えられた振り付けと構成は本当に見事だった。何よりもこの方、もう「顔」それ自体がドラマになっちゃってるのが凄い。最初にセンターに行って、ポーズ決め音楽を待つときの「気合い」の入りようたるや「待ってましたッ!」と大向こうかけたくなるようないい表情だ。「アタシはやるわよッ」という気迫溢れる感じ、たまりませんねえ……こういうイキのいい表情をするのって、結構昔ノリだ。懐かしのスポ魂ノリ、といったら分かってもらえるだろうか。最近は「五輪とか関係なく楽しみたい」「自分がリラックスしてできればー」みたいな風潮でスポーツ選手の意識も随分変わってきているようだが、(それはそれでいいことだと思うけど)私はこの村主選手の前時代的な意気込み、みたいなものが好きなのだ。
 トリノ五輪のときはそんな「入魂」「この舞台にかける!」みたいな雰囲気ががややもすると悲愴的に見えて、ちょっと重かったりもしたが、今回は自分じゅうぶんというのか、王者の風格すら漂っていて立派だったと思う。
 というかこの方の「芝居がかり方」ってーのは本当にユニークですね、フリー演技のときはパントマイム的要素を多く取り入れた振り付けだったけど、私は彼女の芝居を観ていて「北島マヤ」的な「入り込みすぎ具合」を思い出していた。あの美内すずえ作名作大河ドラマの主人公だ、説明は不要だろう。
 もうね村主が最初にセンターについて、「カクッ」と役に入る感じが瞬間的というか「スイッチ入りましたっ!」って感じでアッという間に自分消滅、演技の人になってしまうような感じ。その特質は、逆にいうと一本筋のあるドラマを作らないとフィギュア演技として燃焼しにくいというマイナス要素にもなりがちだが、バレエ音楽やオペラのように元々ドラマのある音楽を使ったらいいんじゃなかろうか。私はこの人がチャイコフスキーの「白鳥の湖」における黒鳥の踊りでフィギュアにのぞむ姿が観たい! そう、あの高速回転でグランフェッテ・アントゥールナンのラストを飾ったらどんなに素敵であろうか。などと勝手なこと言ってますが、それにしても素晴らしい勇姿であった。ボレロのラスト、素晴らしいポージングによるキレのいいフィナーレが今も目に焼きついている。


●追記1
このスグリ演技を見逃した方、興味のある人はこのYoutubeで観れますよ。
http://www.youtube.com/watch?v=KqhJOZvP6Jo&mode=related&search=


●追記2
この日のNHKは充実していた……3時からは大好きだった「純情きらり」のスペシャルがあって、こちらも堪能した。なんだかテーマ音楽を生演奏するパートでは思い出し涙なんか流しちゃって(笑)。すっかり涙もろくなって、歳ですね。達彦さん役の青年も出ていたが、あれだけいい役に恵まれてこれから大変だろうなあ。民放のどぎつい世界にはまらず、なんとか爽やかな青年像を俳優として活かしていけるといいのだけれど。余計なお世話だが。


●追記3
しっかしドーでもいいですがフィギュア、何回見ても「トリプルフリップ」だの「トリプルトゥーループ」だの「トリプルルッツ」だのの違いが分からない。というか瞬間的に解説者が見分けているのが本当に驚異的でならない! なんでわかんのあんた。動体視力って鍛えればあれ見分けられるのだろうか……私には一生無理な気がする。



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