ムリヤリ漢字表記ネームの謎

どんな夢を待っているの……

 最近、近所を散歩していたときのこと。とあるスナックの名前に、私はとてつもない郷愁……というか、不思議に懐かしい情趣を覚えて、思わず立ち止まってしまった。その名も「暮麗路」(ぼれろ)というもの。うーん……なんという強引な。しかし。昭和50年代以前の人なら、この手の「強引・カタカナ名詞漢字化」のノリって分かってもらえるんじゃなかろうか。ヤンキー文化に代表される「夜露死苦!」とはまた一線を画す、ムリヤリ漢字表記の流れ。昔はそこら中に、スナックの店名やらなんやらであったもんだった。 
 やっぱアレですね、この手の流れで一番ポピュラーにして有名なのは「待夢(たいむ)」じゃなかろうか。スナック街などでは必ず一軒あるといっても過言ではない(ちなみにあのゴールデン街にもちゃんとある。入ったことないけど)。その昔、「ちあきなおみ」がアルバムのタイトルにもしていた(写真参照)。うーん「待夢」と「ちあきなおみ」……その情緒において完璧なコラボレーション。この手のスナック系・ムリヤリ漢字表記では、双璧とされるベストネーミングに「待夢待人(らいむらいと)」というのもありますね。ああ……もう昭和臭ムンムン! におい鑑定人、ベッツィー・ライオンズさん(資生堂「Ag+」のCMでおなじみのあのオバサン)でも測定不可能。こちらも「小柳ルミ子」の歌でそういうのがあった。紅白でも歌っていたもの、覚えている人結構いるんじゃないかなあ。
 などということを友人数人に話していたら、「あったあった!」「こういうのもあるぞ!」などと結構食らいつきがよくて、こっちがビックリ。やはり同世代、見てるところが一緒ですね。彼らが教えてくれた情報があまりにおかしかったので、ちょっとここで紹介したい。


1:書籍編集Nさん(30歳・女性)
「流行人」
なんと読むかわかりますか皆さん……すんごいですよこれで「イマジン」と読んじゃうんですねえ……。ちなみに青森県弘前市に存在する理髪店のようです。さぞかしアップトゥデートな髪型にしてくれるのでしょう。


2:雑誌編集Tさん(年齢不詳・男性)
「酒流夢」
さてこちらは読めますか? そう「しゃるむ」と読むのですね、何屋かは忘れましたが多分スナックでしょう。「酒場に流れる夢あり、酒場で咲く夢あり……今宵貴方に歌います」などと懐かしの玉置宏のフレーズが自然頭に浮かんでくるから不思議。


付記:なおこの「〜ルム」には結構同流派があるようで、その後友人から「車留夢(しゃるむ)」「絵留夢(えるむ)」「舞留夢(ぶるーむ)」「茶留夢(ちゃーむ)」というのもあると教えてもらいました。広告代理店のH、お前は研究家か(笑)


3:大学教員Jさん(33歳・男性)
「女騎士館」
うっひゃーこれ分かるかなあ……正解は「メキシカン」ですよ、あー笑っちゃう。ブラッド・ピットジュリア・ロバーツもビックリですね、飲み屋だそうですが絶対タコスやコロナなんて置いてないに違いありません。絶対「角瓶」か「だるま」。


 まだまだあるのだけどキリがないのでここまで。
この手のノリってまだまだ世間の片隅に小さくひっそりと、しかし確実に生き残っているようなんだなあ。ある種の人々のロマンをかき立てるような魅惑がこの「ムリヤリ漢字化ネーム」にはいまだにあるもんなんだろうか。懐かしいなとは思うけれど入ってみたいとは……やっぱり思えない(笑)。
 最後におまけ、ちょっと画像ネタを。


●参考資料その1
 アメリカン・コーヒーってのも聞かなくなりました。堀切菖蒲園にあるそうです。


参考資料その2
 
王道2つ、「待夢」と「来夢来人」。昭和歌謡が聞こえてきそう……。


参考資料その3
 これで「ぼえむ」……なんと大分の友人が送ってくれました。


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