NHK番組「第75回日本音楽コンクール本選  若き音楽家達の肖像」

老成しすぎないでね

 こんにちは、「泉ピン子が死んだよ!」という友人の知らせで驚愕のあまりミルクの入ったコップを落とす夢を見てしまった白央篤司です。あははーなんでこんな夢見てるんだろう年末に。願望なのだろうか……なぜに。
 さて、今日明日で仕事納めという人も多いのでしょうね、一年お疲れ様でした。忘年会続きで胃が頭がやられている人多いのではないでしょうか。それは私。みなさんも飲みすぎにはご注意を。さて今日はクラシックのことをちょっと書いてみます。長年の読者である兵庫県在住のY子さん、あなたは今日読みませんね(笑)。まあ興味のある方はどうぞ読んでやってください。最近軟派ネタ少ないからってどうぞみなさん見捨てないで。

■第75回日本音楽コンクール本選 若き音楽家達の肖像
 もう一週間以上も前の放送になってしまったけれど、16日放送の「第75回日本音楽コンクール本選 若き音楽家達の肖像」(NHK)を非常に興味深く観た。シンプルでストレートな、いいドキュメントだったと思う。「音コン」なんて関係者はやくすらしいけれど、75というその回数が示すとおり歴史も権威もあるコンクールのようだ。第1回が1932年っていうから昭和7年か。一番戦況も悲惨だったであろう昭和19年にも開催されているのが、凄い。執念のようなものを感じますね、コンテスタントだって満足な練習も出来なかったろうに……。ちなみに過去の一位入賞者なんか調べてみたらいるわいるわ、まさに登竜門という感じ。長門美保(戦後の映画俳優の発声訓練などを一手に引き受けていた有名な人)、厳本真理、辻久子中村紘子などの各氏が名を連ねていて、うーんまさに昭和クラシック界の「つわもの」たちって感じですね。
 さてそんな立派なコンクールなわけですけれども、この番組が良かった一番の理由は、挑戦者たる若いコンテスタントたちの姿をごてごてと飾ることなく、生(き)のままにスッキリと映し出したことだ。彼らの姿がなんていうかね……個々それぞれに緊張も気負いもあるんでしょうが、悲壮感とか無理してる感じがなくて、ヒジョーに伸び伸びと、好きなことを一心にやってきたんだなあ、それがお仕着せでなく、やりたいことと教育が綺麗な形で結びついたんだなあ、と自然思わせる子が多くて、見ていてとーーーーーってもすがすがしかったのだ。この番組を見て得た一番の感動はそこだ。そんな子供、最近みてますか? うーんそう、今年の人気者、斉藤佑樹のあの雰囲気に似た感じ、といったら分かってくれるだろうか。(ヴァイオリン部門の鈴木舞、藤江扶紀などがまさにそんな感じ。箱入り娘で音楽好きで、いい意味での純粋培養といったような……そう、「イノセンス」の漂う人達だったのだ)
 なんていうか……音楽家の卵たちっていうのは、昔はちょっとギスギスしてるというか、真面目というか、ともかく自由な感じにかけるイメージを私は持っていた。音楽に遊ぶ、なんてレベルは多分一生かけたって到達できるような境地ではないのかもしれないけれど、彼らコンテスタントからは爽やかな、いかにも若者らしい「オケと共演できて嬉しいな」「いいホールでやれるんだもの、頑張るぞ!」みたいな、すっごく素直な喜びが感じられて、音楽に若者らしく遊んでいるような感じもして……オジサン嬉しかったんだよね(笑)。才能のある子が教育と機会に恵まれて、努力して道を邁進していく……いいなあ、ヘンな映画観るよりよーっぽどスカーッとして感動的だ。明るい未来、なんてそれだけでギャグになっちゃうような陳腐な言葉が如実に現存している――うーん、結構なドラマだったなあ。
演奏内容にもちょっとだけ。ヴァイオリン部門一位の黒川侑という少年(写真・まだ16歳!)の演奏はまさに傑出していて、とても素晴らしかった。少年らしいセンシティヴな情感がありながら、音楽に埋没しない冷静な視点と距離感があり、オケとの息のあわせ具合も大人びない余裕さを見せて……これからが楽しみ。それからピアノ部門の一位、ラフマニノフの1番を弾いた河内仁志(22歳)という人の演奏も興味深かった。ほんの一部しか聴いてないのに偉そうなことを書くのもなんだが、もうちょっと破綻しちゃうぐらいのテンペラメントをぶつけるような彼の演奏を聴いてみたくなった。内に秘めたけっこうな熱情を感じるものの、「コンチェルト演奏」として完成させようとするあまり、綺麗にまとめすぎて不完全燃焼になっているきらいがあるような……リリカルなパートの歌い方はどうだったのだろう。そこをじっくり聴いてみたくなるような演奏だった。
 などと門外漢が好き勝手書いてますが、とにもかくにも、さわやかな人の心に触れるのはいいもんです。そういう人に遅まきながらもならなきゃねえ……と反省して今日は終わり。


●お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓してやってください。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuo-a@hotmail.co.jp