お正月のテレビ雑記 1

朗読はライフワーク

こんにちは、お正月のテレビ漬けな毎日で吉永小百合様にずーーーっと「スーラの絵」について解説され続け、いい加減ウンザリしている白央篤司です。どーでもいいんですが、あのCMやったら多く放映されていたと思いませんか!? あとブドウ畑で白人の女の子がニコーッとして、これまた小百合様がナレーションつけるやつも。スーラが点描だったこと、日本人の何割が知ったんでしょう……。まあ本当にどうでもいい前説ですが、ズーッと書くとか言っておいてチーッとも手をつけてなかったお正月のテレビ雑記です、いい加減松の内も過ぎて正味期限切れそうなんでザッとまとめて列記。まあ私のことだから焦点はかなりピンポイントだと思いますが、どうぞおつき合いください。


●第20回ビートたけしお笑いウルトラクイズ!!(日テレ系 1/1)
素晴らしい……ここまで命をかけて「くっだらない」ことに身を投じてる姿をここ近年目にしたことがあっただろうか! 個人的にはお正月の最優秀番組といってもいいぐらい。腹よじれるほど笑わせてもらったもの、ゲラ止まらなくて「悶死」という言葉が一瞬頭をかすめたほど。もう文字でこのくだらなさ、直球なおかしみを伝えるのは不可能だなあ。冷凍室に熱々のロウをかぶせられた芸人達が入って「人間ロウ人形」になってポージングしたり、口だけ開けたパックに入って空気を吸出し「人間真空パック」になっていじられまくったり、お約束のシリーズだが「トリモチ」に飛び込んで粘着地獄のなか宙を舞ったり……はい、もう見てない人は何が何だか分からないことでしょう。これらすべてキッついことだよなあ、イヤだろうなあ、収録後本当に疲れるだろうなあ! しかしながらそんな「マジでやばいよこれ」というような関門が出てくれば出てくるほど、反射的に「これこそが私の見せ場!」と脊髄から指令が出て飛び込んでいく芸人達の姿、その何といじましくも可笑しいことか。日頃はもっと瞬発力のないような芸人達もが「え〜い、やったるわい!」とポンポンとくっだらないことに参戦していくその姿、笑わせていただきました。私的ベストコーナーは「人間性クイズ」における「江守徹中尾彬になぶられるカンニング竹山」ですね。江守と中尾が打ち合わせして竹山の前でケンカ、「どっちの味方だ!」と散々困らせた後、中尾退場。「さっきはごめんね、好きだからこそ」と江守がホモに豹変、竹山に迫ると中尾が帰ってきてさあ大変! と思いきや「ひどい! 若い子ならいいのか!!」と中尾が江守をなじり、竹山にからむという非常に良くできた脚本で散々竹山を困らせる姿を隠し撮りしてる、というもの。うーん言葉にすると本当に悪趣味だな(笑)。だけどねえ、これがまた芸達者な男優二人の芝居がうまくて嫌味なく笑えるんですよ。これらを見た後私は、他の正月番組における芸人達の小競り合いが物足りなくて仕方なかった。大人がバカバカしいことやるときは真剣にやらねばダメ、といういい見本でしたね。


知るを楽しむ・人生の歩き方スペシャル(NHK教育 1/1)
 岸恵子佐伯チズ田辺聖子といった人々の人生をインタビューとフィルムで綴っていくドキュメント。内容もさることながら、ゲストの辺見えみりのコメントが印象的だった。「結婚は理想を描かずにするものだ」うーんこの若さにしてなんという聡明な。小津安二郎監督の昭和24年の名作『晩春』で、父親役の笠智衆が娘の原節子に語った名セリフのよう。「幸せなんて最初からあるもんじゃない、二人で作っていくもんだ」みたいなことを父は「結婚しても今以上の幸せがあるとは思えない」と嫁ぎたがらない娘に説くのだが、まさにそれと同様に人生訓を私は感じた。この女優、「丹下左膳」の舞台でもいい演技をしていたが、これから結構な成長株じゃないだろうか。蛇足:岸恵子がその昔パリに結婚で旅立つ映像が見れたのも嬉しかった。輝かんばかりにお美しいですね、見送りに来た池部良有馬稲子久我美子の各氏も素敵、まさに銀幕の人という感じで溜息が出た。


●「あの人に会いたい」(NHK教育 1/1)
 こちらはNHKに残されたインタビューフィルムの中から、各界の名を遺した人々をセレクトして一挙放送したドキュメント。沢村貞子幸田文といった昔の下町女の、慎ましやかでシャキッとした気取らない語り口は聴いているだに清々しかったし、写真界の大御所、秋山庄太郎原節子を戦後の焼け野原で見たときの感動を語るその姿は、ひととき青年の眼に戻ってキラキラしていて何とも微笑ましかった。しかし私が一番印象的だったのは、インド仏教の研究者・中村元氏のその姿ですね。うわあ……これこそが賢人というんでしょうか、溢れる教養と知性、それらが本物であるかのごときにじみ出る寛容性、そして慈愛の心。釈尊の言葉「自分に頼れ、法に頼れ」という一説を紹介されていただが、まさに今の時代にピッタリくる言葉だと思う。何も学ばないうちに自信を持ったり、俺には出来る、可能性がある、きっとどこかに俺を必要とする場所がある、と蒙昧なまま当たっては砕け、喪心のまま心を病んだりドロップアウトしてしまう人々が多い社会、この言葉の意味を探ることはとっても価値あることではないだろうか。突き詰めた仏教論は社会学に転じると思う。

釈尊の生涯 (平凡社ライブラリー)

釈尊の生涯 (平凡社ライブラリー)


 と、ここまで読み返してみてウッワー長いわ相変わらず。また続きは明日そうそう、今日買った雑誌だが「団塊パンチ」という雑誌の第3号は面白いですよ、ちあきなおみの特集を組んでるんだが、これが編集者魂溢れる渾身の作で、素晴らしいドキュメントになっている。大手の本屋にはあると思うから、ちあきファンの人は必読です。ではまた明日。

団塊パンチ (3)

団塊パンチ (3)


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