本「プラダを着た悪魔」・一週間の記録

魅惑のソフトヴォイス、M・ストリープ

プラダを着た悪魔〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

プラダを着た悪魔〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)


 アメリカン・ヴォーグを舞台にしたというので興味を持ってみた映画『プラダを着た悪魔』ですが、ちょっと肩透かしだったので(まあ詳しくは過去帳見てほしい……よかったら。http://d.hatena.ne.jp/hakuouatsushi/20061201)原作買って読んでみました。で。
 うーん……映画よりは詳しくファッション誌の裏側を覗けましたが、結局この方秘書、というか使いっ走りを9ヶ月勤めただけなので、そんな深いところ描けるわけもないんですね。当たり前だ。よって会社の雰囲気、きらめくようなパーティと溢れる有名人(セレブ、じゃなくてセレブレティね。この二つの言葉にはデヴィ夫人とシンプソン夫人ぐらいの開きがある)、そしてニューヨーク・ハイライフの一端を楽しむ、というところしか眼目がない。そう、だからヒットしたんですねー、カルチュラルにはなーんの発見もなかった。
 この本で一番話題になってるところの鬼編集長、ミランダの行状についてだけど、(自分勝手で気まぐれで直情的で人を人とも思わない……そんな風に描かれている)私はかつて某・大女優の付き人をした経験があるので、このぐらいじゃちーっとも驚けなかった。「ああこういうノリ、懐かしいなあ」というある種の「惻隠の情」ぐらいは感じたけどね(笑)。この本の一番下らないところは「(ファッション業界、および編集長ミランダは)普通と比べてありえない、一般常識からして逸脱しすぎ!」という観点で描かれているところなのだ。なんなんだよーその「常識」って。
 うーん……ていうか違う世界に入るときって、一回自分が当たり前と思ってること、ぜーんぶ取っ払うの当たり前じゃないかなあ。「常識」という足場をキチンと保ちつつ「非・常識」(未知なる世界)の世界で仕事をしようなんて、甘えってもんでしょう。それは「セレブ」という言葉の持つムード、リッチな感じにだけ憧れて、その裏の責任とか商売とかプライドやマナーといったものを全く考えない「女の子」的幼稚さなんだよなあ。金持ちらしい男と結婚したら、それ相応のタスクがついてくる、ということを全然想像せずに結婚して、離婚しちゃうような浅薄な感じと同質ね。(もちろんこれと同質の男も腐るほどいる。「かわいいでしょ僕ー」というギャル男は増殖の一途だ)
 芸能界や一部マスコミには「プチ・ミランダ」ってたくさんいると思うけどねえ。ミランダ、そんなに大したバケモノだろうか。「日本にもいる! プチ・ミランダ大特集」とか企画出したら通るかな。絶対本人取材拒否なんだろうけど。某編集長のKさん出てみませんか。
 閑話休題。まあ……この本、社会人一年生のマスコミ体験記としたら優秀な出来なのかもしれないけれど。うーんでも、やっぱりアンドレアという主人公、私には「いーっつも文句ばっかりいってる女だなあ、だらしないぞ!」としか思えない。もっと優秀でシビアな新人いっぱいいるもの。自分がどんだけ出来ない女だったかを下巻の最後のほうまでずーっとのべつまくなしに語られても、しらけちゃうなあ。けれど! 世間の評価は「不満言って当然よね、ミランダ最悪!」とか共感してるようなのだ、そして華麗なるブランド・ネームの羅列に喝采を送っているようで……ああ、わからん。だったらヴォーグ読んでるほうがずっとマシじゃない? 写真もついてるんだし。映画『嫌われ松子の一生』もそうだったけど、自分の好きなように生きるのと自分を偽らずに生きるって全然違うことなのに、最近そういう混同が多い気がする。
 ネガティブなこと蛇足しちゃいますが、翻訳がどーにも私はノレなかった。ニューヨークの街や生活やファッション業界が好きなんだな、面白がってるんだなあという感情をこの訳文からはどーにも得られず、テンションを削がれたのも残念。ていうか……いまどきの女の子ってものに全然興味もない人なんじゃないだろうか。言葉のセレクトがいちいち不自然だぞー!
 アン・ハサウェイは中々に素敵だが、編集が悪かった。


■自分のための一週間の記録
日:懐かしのK社時代の先輩編集K氏にご飯をごちそうになる。ありがとうございましたありがとうございました。新宿「寿司清」にて。おつまみで食べたサヨリの皮を焼いてくしに巻きつけたものが面白かった。ゆずと塩で食べる穴子イカなど面白くいただく。ご馳走様でした。
 
左:さよりの皮を焼いて巻いたもの 右:ヒモキュウを海苔で巻いたり、生げそだったり。幸せ。


月:ドラマ関連本で神楽坂の銘店取材。近くの赤城神社でおまいり、霊験あらたかでのちに驚く。敏腕女性編集・Mとお茶をする。大風邪を引いていて痛々しい。夜はヘアメイクのKさんに呼び出され新宿3丁目のバーでちょっと飲む。
火:『魂萌え!』試写が新橋にて。先輩ライターY氏から仕事を振っていただける。ひええ昨日のお稲荷さんの霊験あらたかに。御苑の「青葉」でつけめんのランチ。夜は家で椎名誠原作の「白い手」を観る。小川真由美が好演。
水:原宿で長年のファン俳優・E氏と演出家・N氏の対談に参加、その後歌舞伎座にて夜の部を鑑賞。K社の校閲で大学の後輩と一緒に。木挽町の安い居酒屋「ちきゅうや」で軽飲み。
木:朝から晩までズーッと原稿書き、眼が痛いなあ。近くの銭湯でリラックス。
金:この日の午前中に原稿書き上げてもうフラフラ。そしてその後休む暇なく神楽坂取材へ。ボート乗り場がある有名な「カナル・カフェ」の成り立ちが面白くて、オーナーさんの本を書きたくなってしまったぐらい! テンションも上がりいい感じで四谷のスペイン料理屋でバイト。そこのオーナー夫妻が貧乏ライターを哀れんでか終わってから飲みに誘ってくれる。名店「彦や」にて、のどぐろ、ひげむつ、ミル貝、おいしい魚、ひと手間かけた仕事、いつ行っても素晴らしいなあ。ご馳走さまでした。あ、この日お稲荷さんにお礼参りしました、油揚げ持ってね(笑)。

「彦や」のおつまみ3点:手前から「ばくらい」「生かにみそ」「塩辛」日本酒の正しい肴


土:あまり寝れず。人形町日舞の稽古。なんだかんだ10年目。終わってから東京駅そばパールホテルまで歩いて(結構近くて15分ぐらいだった)漫画家さんのインタビュー、仕事紹介してくれた友人編集・Nさんありがとうございました。夜は戻ってまた原稿書き。


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