『舞姫―テレプシコーラ―』

早く11巻を!

 こんにちは、ニコラス・ケイジフランシス・フォード・コッポラの甥だったことを知って驚いている白央篤司です。へええ知らなかった……なんちゅう顔の違う甥とおじさんであることか。今日朝っぱらから懐かしの『ペギー・スーの結婚』なんて観てたらそんなトリヴィアがノーツに書いてありました。いやーしかしやっぱりキャスリーン・ターナーっていい女優ですね。『ナイルの宝石』『ロマンシング・ストーン』なんて絶対後世に残らない映画も出つつ、『男と女の名誉』とか『シリアル・ママ』(大好き!)なんて作品も残してる彼女、もっと新作がみたいなあ。さて今日は先日発売された漫画をネタに書いてみます。
 蛇足:あ……ということはソフィア・コッポラとニコラスはいとこなるのか。


■■「舞姫」■■

 やっぱり山岸凉子先生は天才ですね……読み終わった後のゾゾゾーっとする戦慄、そう、鳥肌が立つ感じを久々に覚えました。今日の発売を楽しみにしていたのだけれど、うーんグレイト。第1部完と銘打っているが、早く続きが読みたいなあ。
 この作品はバレエの世界、それもプロではなくバレエ教室に通う中学生を主人公にした話だ。いたって日常的な設定で、プロへの憧れ、プレッシャー、中傷、挫折、そして成長を描いている。そこが、すごい。今までさんざんっぱら取り上げられているテーマなのに、読み込んでしまう。引きずり込まれてしまう。下手な人がやると「ありきたりなんだよ」「もっと新発見ないの?」「目新しい世界見つけようよ」などと言われちゃうような主題を、胸倉をググッと掴まれたかのようなグングン吸引力で見せていく。 (ただこの巻に関してはラスト1話だけが異様に駆け足だったけど。単行本にする都合もあるんだろうが、あと1話のばしてじっくり舞台を描くべきだった)
 私はこの作家を勝手に「凶兆描かせたら日本一」と呼んでいるのだけれど、もうほんっとに不幸を暗示させたら天下一品ですね。「うわ……なんかヤな予感……」「やめてよ……ひょっとしてひどいこと起きるでしょう、すごい可哀想なことになるんでしょう!」という緊迫した脅迫観念にも似た思いを抱かせる。手に汗握っちゃう。なんでもないワンカットが、すごく意味を持って不吉に感じられるんだよね。アルフレッド・ヒッチコックの名作『鳥』の最初のほう、ただ普通に鳥をとらえてるカットが異様に不気味に見える感じに近いなあ。平凡な日常からいきなりアンユージュアルな瞬間に突き落とされちゃうショックにも似た感じ、ロベール・ブレッソンの大傑作『ラルジャン』のテンションに近い、といったら映画好きの人は分かってくれるだろうか。この第10巻では余りにも非情なドラマ的展開が勃発して、私はすごいショックを受けてしまった。「ダ・ヴィンチ」の連載時など特に反響が大きかったようで、友人の仲良し漫画編集Mなどは思わず職場で「山岸先生は漫画の鬼よ!」と喝采をおくったそうな。詳しくは触れないが、面白い漫画読んでないなあ、という人ならぜひ大人買いして一気に読んで頂きたい。おすすめです。


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