「キムタク」に引きずられる「木村拓哉」

2大巨頭

「笑ってねえよ」―-――半ば真剣に木村拓哉の携帯のCMに言い返してる人、けっこう日本中にいるんじゃないだろうか。私はマジでそう思っている。このCMが流れるたび私は自分でも驚くほどカチーンときてしまう。そしてその後「テレビ相手に何をおとなげない……」と軽くショゲてしまう。ああ、精神衛生的に悪い! 別に木村拓哉が嫌いなわけじゃない。なんだろうなあ、商品コンセプトが嫌いなのかなあ。「1mの水深に30分間放置しても本体内部に浸水しない防水性能を実現」とか言うのがウリなんだそうだが、そんなもんカッコつけずに「今まで携帯をトイレに落としたことあるドジなみなさんに朗報!」とかなんとか直球に言えばいいじゃないか。「一度やったことある人はまたやりますよー!」とか言ったほうがよっぽど訴求力あるんじゃなかろうか。

 この「ムカッ」とくる原因はひとえに木村拓哉の「出すぎ」にあると思う。そしてそれは「守られすぎ」という木村拓哉の状態を思い起こさせるところにあるんだと思う。キムタク主演の映画『武士の一分』で私が受けた衝撃は、話の内容でも役者の演技でもなく、ひとえに「ポスターにおける木村拓哉の不必要な名前の大きさ」これに尽きちゃうんですねー。いろんなバージョンがあるようだが、冗談抜きでキムタクのクレジットは大体にして他のキャストのゆうに15倍ぐらいはあった。たまげた。そしてなんとあるバージョンでは左右に「山田洋次」「木村拓哉」の文字がおどり、あろうことかふたつは同じ大きさだったのだ! すごいなあ……ヨージと同列か。そう、キムタクは渥美清を超えたのだ。高倉健さえも超えたといっていい。(「寅さん」でも「幸福の黄色いハンカチ」でも監督の文字級数と俳優が並ぶことはなかった) 拓哉 イズ ア キング オブ ジャパンエンターテインメント! ということは森繁が死ねば俳優協会は拓哉のものに……なわけないか。


 でも何がしたいのかなあ。三船敏郎勝新太郎のようなスターを育てよう! というチャレンジなんだろうか。近藤雅彦や東山紀之だってここまでの厚遇は受けていないだろう。ジャニーズはキムタクをどうしたいのだろうか。とりあえずハクをつけるだけ付けておきたいのかなあ。うーん……戦略も何もないまま「いけいけドンドン」で(クラス的に)高めの仕事を事務所が取り巻くっているような印象を受けてしまう。とっても危険なことだ。
 「木村拓哉」という人は伊達じゃないと思う。「なんだかよくわからないけどずっとトップアイドル俳優」というポジションにいる人なのだ。よほどの精神性を持たなければできない仕事だろうし、強いメンタリティと自己抑制力、半端じゃないよね。女優さんなんてドンドン「ビーイング・綺麗」をやめていく中、木村拓哉の「踏ん張り力」は驚異的とも言える。だからこそ危険だ。ここんとこ「キムタク」っぽい行動に「木村拓哉」は引きずられてきているんじゃないだろうか。「笑ってんじゃねえよ」というセリフは木村拓哉がキムタクをイージーになぞっているような、そんな恐ろしさを感じさせる。郷ひろみが「ジャパーン」と言ってしまったり、田原俊彦がイスに座るとき、一度足を高く上げてから座るような感じと似た安さを感じる。このCMの持つ「ムカッとさせ具合」はそんな現実を如実に見せてくる。あぶねえなあ。いっそのことホリでやればよかったのに。


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