はじけるお菓子

hakuouatsushi2007-02-16

小さい頃、ちっちゃなオレンジ色のツブツブで、こんぺいとうの先が尖ったような形をしたお菓子があった。口に入れると「パチッパチッ!」と音を立ててなくなる小さなツブツブ。味がどうこう、というお菓子ではなく、はじけて消える不思議な感触のみを楽しむような、そんなお菓子だった。
 発売されたてのころはみんなで「めずらしー」「おもしれー!」とかいって何度か買ったように思う。今だったら口に入れるのをためらってしまうような、食べ物とは思い難いショッキング・オレンジの色合いも、不思議にカッコよく思えた。でも気がつけば、そのお菓子はお店の棚から消えていた。そして、最近までずっと忘れていた。
 そんな名前も思い出せないお菓子が、こないだパッと心に浮かんできて、自分でも驚いた。芸人達によるちょっとした「くすぐり」だけを散りばめて、とくに内容も幹となるテーマもない番組を見ていたときのことだ。芸人たちそれぞれは自分なりのネタをもっている実力者が多かったのだが、そんなネタを披露するべくもなく、ちょっとしたリアクションとトークだけを個々にしゃべって終わるだけ。というか今は全部そんな番組だけれど。
 ちょっとした刺激、目新しさ、それらは味わう暇もなくすぐ消えてなくなる。喉もと過ぎれば、どころか喉を通る前にどこへいったか分からない、そんなお菓子が昔あった。あのお菓子の味を、どうにも私は思い出せない。そもそも味ってあったのかなあ。といいつつもテレビをつけてしまう夜。本当は濃厚な味を持っている、濃厚に熟成できるはずの素材を活かせない、育てないテレビはどうなるのだろう。お菓子の棚ごと消えてなくなる日が来るのだろうか。