一週間の食雑記

　あったかい。風もない。ああ、うららかだ！
　今日の東京はひたすらに過ごしやすく、のどかだなあ。そう、のどか。漢字で書くと「長閑」ってな表記だが、言いえて妙ですね。こんだけいい陽気だと長らく閑（ひま）を楽しみたくなってしまう。と……自分の怠惰を気候のせいにしたりして。

　何回も洗濯回し、エッチラ干し終えたら
「はい、一日の仕事終わり！」
　という気になってしまった。けっこうな達成感……小林一茶の「めでたさも ちうくらいなり おらが春」　なんて句をなぜか思い出す。一茶はちょっと自戒と皮肉を込めてこの句を詠んだのかもしれないけれど、こうして洗濯物を終えてダウニー（お気に入りの柔軟剤ね）の香りに包まれているだけで、「ほどよく、幸せだなあ」と嬉しくなってしまう。春ってのは人を怠惰に、のどかにさせてしまう季節だ。
　と、いい人みたいなブログですが、その10秒後には「いっ、飯島愛が引退!? 　仕事できないぐらいの膀胱炎っていったい……？」だの「宇多田ヒカル離婚!?　キャシャーン紀里谷とはうまくいかなかったか……」だのゲスなニュースを読み漁って目をむいてる自分がいる。下衆と風流の間を我ながら目まぐるしく往来するこのごろ。
「春の海 ひねもすのたり のたりかな」
　はい、仕事します。土曜日は一週間の食記録。

日：なぜか朝から「ミートソース作らなきゃ……」という激しい欲求に駆られる。それはもはや義務感のような焦燥をともなうエモーションだった。ちゃんとしたキッチンを持っている仲良し・Kにいきなり「お願いだからミートソース作らしてください」というわけの分からない電話をかける。快諾。「ぜったいに松の実をこんがりめにローストして入れると美味いに違いない」「最後にみじんに切ったオリーブをひと混ぜしたら最高に違いない」というアイディアを実践。結果はまあまあであった。純赤味の牛ひき肉だけで作ったらもっと美味かったろうなあ。そして春雨と香菜、ひき肉、木くらげ、セロリがあるという理由だけでヤム・ウンセンも作る。ミスマッチだが中々美味しくできた。

ちょっとおさらいレシピ「ヤム・ウンセン」
１：春雨をもどしておく。お湯で干し海老と木くらげももどしておく。ひき肉をいためる。
２：セロリの葉っぱと茎、新玉ねぎ、にんにく1かけをスライス。
３・もどした春雨を食べやすい長さに切って、１と２を全部ボウルに入れる。
４：ナンプラーとレモン汁を１：１で味つけ。
５：最後に香菜をたっぷりのせて出来上がり。
すっごい簡単。ホントのレシピは知らないけどこれで結構それらしい味になった。

月：家に閉じこもって仕事。もやしを炒めてインスタントのしょうゆラーメンにたっぷりのせる。そしてザーッと中国黒酢をかけていただく。なかなかに美味しい。

火：この日は飯田橋〜神楽坂界隈を歩いてて昼飯のタイミングを失ってしまった。「五十番本店」の肉まんをほおばりながら歩く。二宮和也主演「拝啓、父上様」の影響だろうか、おばさま連中の観光客がヒジョーに多い。戦前は寿司屋だったという甘味どころの銘店「紀の善」で「神楽もち」なるくずもちにあんこがたっぷりのせられたものを頂く。塩味がほんのり香る上品な甘さ、おいしいなあ。連れは最近の人気メニュー「抹茶ババロア」を食す。これまた贅沢に抹茶を使用してるのがわかる濃厚な香りで、おいしい。まあ素材が良いのも納得のお値段なんだけど。その後渋谷に移動、高校生の頃から通ってる喫茶店「ケニヤン」で定番の「アイミティー」を飲む。甘いんだけどそれに勝てる紅茶のしっかりした香りがあって、おいしい。うーん……懐かしい味。あのころはまだ10代で……（以下省略）

「紀の善」の抹茶ババロア。クリームとあんこと一緒に食べるとさらにうまーい。

「ケニヤン」のアイミティー。青春の味ってんでしょうか。なーーーんちゃって。

水：この日は習っている日本舞踊のおさらい会、そのリハーサルが一日中人形町の日本橋劇場で行われる。女優の宮本信子さんも出られるようで豪華な会だ。帰り道水天宮の中華「翠蓮」にてお師匠（し）さんと夜ご飯。いずれもしつこくなく美味しく、量もほどよく素敵。ごちそうさまでした。
　
鶏肉をもち米のソースと一緒に蒸したもの。しっかりした味だけどしつこくない。右は海鮮やきそば。

木：なんだかいろーんなことがある週だなあ。予定がいろいろあるのは嬉しいけれど、なんだかギュウギュウした気分になってしまった。「息抜きたい！」そう思った瞬間、横に「キリンシティ」があって思わず飛び込んだ。「ブラウマイスターひとつ」そして煙草を一服。うーん……うまい。15分したら移動しなきゃなあ、などと考えつつボーっとしてると、バーテンさんが「お待たせしました……（といってビールを差しだし）……今日も一日、お疲れ様でした」と言ってくれちゃったんだなこれが！　それがまた「あなた昔劇団にいたでしょう」ってなぐらいのシミジミしたトーンで言うんだ（笑）。ありがとう渋谷キリンシティのバーテンさん、あなたに生きる活力を（少し）もらいました。

金：この日は渋谷にて取材。あんまりゆっくりも出来なかったので、渋谷東急のフードショーにあるイートイン「サイゴン」にてベトナムごはん。コムネム、というビビンバ風のまぜごはんも美味しいのだが、今日はビーフンのつゆそばと蒸し春巻きのセットにしました。美味。

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