スリランカ・カレー

今の子も使ってるのかな

 スリランカに行ってきたという知人から、レトルトのカレーをお土産に頂いた。私はタイやベトナム料理に目がない。アジアのカレーは国それぞれにちょっと似通い、それぞれにまったく違う味わいがある。どんなところか想像もつかないが、スリランカのカレーとはどんな味なのだろう。お湯が煮立つ頃には楽しみな気持ちでいっぱいになっていた。ごはんにかけると何の葉だろう、数種類のハーブのようなものが入っていて、香ばしい。綺麗なチョコレート色のルーも珍しく、ひとさじパクッと口に入れた。


 食道の形がわかる、という経験もそうそうない。
カレーが通っていったであろう食道の道のりが、ひりひりとしたような胸のつかえと共に感じられてくる。ひとことでいって、私には非常に「しょっぱからい」味わいだった。ごはんにかけてバクバク頂く、という風情では到底なく思え、大きな軌道修正が必要に思われた。どこか塩漬けの煮込みのような感じだったので、ルーや具をなめなめビールでも頂こうかと思った。大好きなプレミアムモルツが、肉のひとかけをかじるごとにドンドンなくなっていく。私が飲むからだ。ああ、辛い………しょっぱいよお! ダメだ。私は食物に久しぶりに負けた。


 4分の1ほど頂いて残してしまった。ごはんを残すなんて何年ぶりか。スプーンがささったまま、カレーとごはんが冷えていく。油が固まるのか、表面が膜を張ったようになり、どんどんまずそうになっていく。どこか恨めしそうなそのカレー。こんな風景は小学校以来だ。
 私はドラマや本によく出てくるような、給食を食べれず掃除の時間まで残されているような子供だった。今思えばなんてことのないグリーンピースやピーマンが、どうしても食べられなかった。そして先生はそれを許さなかった。一番美味しいであろう、ホカホカの配膳時だって頂けないシチューやナムルである。それら時間と共にどんどん乾燥し、まずそうなことこの上なくなっていくのだ。春雨は水分を吸って肥大し、大嫌いなピーマンエキスをコレでもかと吸い込んでいるように見える。にっくきシチューはほとんどヴィシソワーズのような冷製に変化してる。グリーンピースは、おばあちゃんの指先のようなシワシワの表情に変わり果ててしまった。掃除が終わり、ときはすでに帰りの会(こういうものが他の学校にあるか知らないが、私のところは帰り前にこういうHRのようなものをやっていた)、「明日は理科は実験だから何々を忘れずに」みたいな連絡事項が話されている。ランドセルに教科書やらを詰め込み、帰り仕度をするクラスメートたち。そして私の机の上には、今なおプラスチックの器と先割れスプーンが居座っている。そして、ここから先の記憶は不思議なことに特にない。先生が根負けしたのか、それとも私が食べたのか、どうにも判然としない。小学校6年ぐらいの頃には、食べられないものは自然となくなっていた。


 多分、このレトルトがどうにも私の口に合わなかっただけで、スリランカのカレーはもっと美味しいものなんだと思う。スリランカ料理店、なんてあまり聞かないけれど、この不名誉な一件のためにも是非美味しいスリランカ・カレーを頂いてみたいと思う。けれど私はこの先、「スリランカ・カレー」という言葉を聞いたらしばらく、あの冷たいシチューとナムルを自然思い出して、憂鬱になってしまいそうだ。スリランカには罪などないというのに。


〇今週の食雑記
土曜日は毎週恒例、自分のための食雑記ですが、今回は一食の思い出が長くなってしまったので、記録的に駆け足雑記。


月:近所の八百屋で香菜が安かったのでたっぷりきざんで頂く。丸美屋のマーボー春雨にたっぷりのせて、黒酢とすり胡麻をたっぷりかけて。手軽で美味しい。


火:歌舞伎座の帰りにベルギービール・パブ「オブロン」へ。ここはフライドポテトが飛びぬけて美味しく、あとは普通。
 


水:東新宿でギャンブルのような気持ちで入ったタイ料理がまあまあの当たり。
 グリーンカレーと青菜炒めのセットで880円、量も多いぞ!


木: 
昨日行ったトンタイが気に入ったのでもう一度。トムヤムラーメンだがこれは至極普通であった……680円。


金:写真なし。渋谷の「長崎飯店」で皿うどん(普通・850円)を頂く。評判のとおり中々に美味しい。中華アンカケにカキが入ってて嬉しいサプライズ。サッパリしていてくどくない。特上と普通があるが、普通のほうが美味しいとの噂。


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