「ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌの部屋」

カレイドスコープの中のよう

 先日まで新宿伊勢丹の1F、ザ・ステージでやっていた「ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌの部屋」、これがまあ……筆舌に尽くし難いファンタジー溢れる展示で、ジャズ・スタンダードのタイトルを借りれば「Words can’t describe」文字では表せないような絢爛に満ちた世界だった。


 ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ、彼女はクリスチャン・ディオールのジュエリー部門をつとめるデザイナー。かつてはシャネルのハイ・ジュエリーを14年も手がけていたというベテランで、貴族出身の女性。そんな彼女の生み出すデザインの数々は……なんというか、少女の夢がそのまま具現化したかのような世界。
 リングに据え付けられているのは、大きなピンクサファイア。その周りには宝石の花々があしらわれ、輝くてんとう虫や蝶が群がる。それ自体がまるでひとつのブーケのようだ。オニキスやコーラルで出来た大きなバラが、ゴールドのリングから咲き誇っていたり、嘘みたいに大きなシトリンやモルガナイトがゴロンと施されたリングがあったり。私はこれらのジュエリーを見ているときふと、小さい頃読んだ童話を思い出した。
 おぼろげな記憶をたどると、こうだ。心優しき少女が泉を通りかかり、そこにいた老女だったか誰かに優しくしたところ、「あなたはいい子だ、ごほうびをあげよう」と魔法をかけられ、それ以降その少女が何か口にするたびに、それはそれは綺麗な宝石がこぼれ落ちるようになった……そんな話だったと思う。
 そのときこぼれ落ちた宝石は、こんな品々だったのではないだろうか。そう、現世とは全く隔絶されたヴィクトワールの美意識、そこからこぼれ落ちるかのごときジュエリーの数々を、私は堪能した。
 これらデコラティブな作品とはまた別に、シンプルな中に可憐性を表現したシリーズもあってそちらも美しい。ディオールのホームページでこれらの写真が見れるから、興味のある人は是非見てみてほしい。うたかたかもしれないが、現世の俗を忘れられるに違いない。
○公式HP:http://www.diorjoaillerie.com/jewelry.html<日本→カテゴリー→リング の順でクリック> 


○付記
って、今日の私いったい誰なんでしょうね。いつもとあまりに違う人格のような……多重系? 分裂? まあこんな私もあるのです。


○余談
これらジュエリーの見事さもさることながら、展示のコーディネート、スタイリングの見事さ、可愛らしさも特筆ものだった。ヴィクトワールの指示のもと東京のディオール・スタッフが手がけたそうだが、素晴らしいのひとこと。ヴィクトワールの部屋を再現したミニチュアは、世界各国のファンシーなものに溢れたおもちゃ箱のような世界だった。


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