いまだにトラウマなあのCM

おそろしい……

 小さい頃……私は感情移入というか思い込みが激しいというか、やったらすぐ「のめりこむ」ガキだった。現実とフィクションの見境がつかなくなっちゃうのである。テレビを見ているとその世界にすぐさま没入。ゆえにネガティブなテーマや不幸、人の生き死にを扱ったドラマや番組などは禁忌の最たるものだった。
 見ているうちに「自分もそうなるんじゃないか」という思い込みが強烈に頭の中で広がってしまう。そこで思い出されるのが「知られざる世界」(こんな名前のドキュメント番組が昔あった)という番組だ。この番組にはよく泣かされた。「母と子が立ち向かう小児ガン闘病記」というのは今でも忘れられない。赤ちゃんの手術シーンなんかヒッジョーに生々しく、摘出した腫瘍がゴロン、とまがたま状のボウルの上に転がった瞬間は今も目に焼きついている。あああ……アツシ(5歳ぐらい)もう大変。
「ぼくもガンになっちゃうんじゃないか……」
 ふとおなかを触ってみると、小さく指の腹に当たるものがある……。広がりゆく不安と恐怖……うっ、うっ……こうなったらもう大変。ベソかいて「もうダメだあぁ」と泣き出しわめき続ける。
 何がダメなのか。
「それ骨よ」
 またかよ、といった表情でウンザリとつぶやく母・フジエ。
「うぎゃああああーん」聞きゃしない。泣く泣く。「テレビだっつうの」「小児ガンって赤ちゃんしかかからないのよお」
「びぎゃあああああーーん」さぞかし母は日本猟友会呼んで麻酔銃でも打ち込んでほしかったであろうなあ。こんなやりとりが、よく白央家では行われていた。


 そんな私の幼少期、最大のトラウマが、覚醒剤のCMであった。並んで座っている母と子。
子供はその当時の僕と同じぐらい。普通のお母さんと子供が笑っているのどかなカット。
しかし次のシーンになると突然、母さん顔面蒼白でフラ〜ァっと揺れる。
手には注射器。アザのある二の腕……子供が次第に泣き出す。
覚醒剤は確実に人間を破壊します」そんな男の声のナレーションが入る。
やがてお母さんは消える。泣き叫ぶ子供。
「おかあさん、おかあさああああんんんッ!」


 もうこのCMの恐ろしさたるや筆舌に尽くし難い。あまりのテンションの異様さに私は金縛りにあったような気持ちになった。金縛りあったことないけど。その子供の恐怖が、当然のように私にヒシヒシと伝染してくる……。
(母・フジエは後年、このCMがはじまった瞬間本能的に「まずい……」と思ったと語った)
 もちろん、泣きに泣いた。
なんでそう思うのか分からないが「お母さんがいなくなっちゃう」と心から思ってしまった。
「ママぁ〜ママぁ〜行かないでえぇ……(鼻水すする)」
 どこに行くんだよ。フジエは思ったであろう。
覚醒剤ダメえェ〜(号泣)」
 してねえよ。フジエは舌打ちのひとつでもしたであろう。
ああ、うざいガキだ。よく山とかにおいてこなかったものである。親になるって大変だなあ。
 と、なぜにいきなりこんなことを書いているかというと、この個人的に人生最大の衝撃的なCMの動画があったんですねーネット文化ってすごいなあ。いやービックラこいた。ぜひ皆様ご一覧ください恐ろしいですよー。
http://www6.plala.or.jp/kwkmtkcy/kitchen_mother.wmv
 久しぶりに(26年ぶりぐらい……あはは)見ましたが、うーん今でも結構怖いわコレ。見返してみたら最初からガキ泣いてるんですね。そして「ママ、ママぁ〜」って泣いてるんだ……やっぱ記憶なんて当てならないなーあははー。
 ま、昔はこういうトラウマ決定なCMや不気味な映像が結構多かったですねえ。その頃(昭和50年代前半)の映像や雑誌における不思議なノリ、オカルティックなブーム、濃すぎるエロ・グロといったものに私は最近妙に惹かれている。なんなんだろうこの気持ちは。単なるノスタルジーだけではないのは確かなのだけれど。と、オチもありませんが、今日はこんな雑記です。


●追記
しかしこのCMに出た子供は心に深い傷をおったのではないだろうか……。この子と映画『鬼畜』の三兄妹が真っ当に育っていることを願ってやまない。


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