映画 『ハンニバル ライジング』

ハンニバル ライジング

 非常に「まっとうな」復讐劇だった。今回は「いかにしてレクター博士は生まれたのか?」という彼の人格形成物語。彼が幼少期に受けるトラウマ、そのショッキングな描き方が非常に巧妙。観客は「なんて残虐な、非道な!」と最初にショックを受け、ゆえにその後の若きレクターの常軌を逸した行為に対し、どこか好意的な見方をしてしまうのだ。

 そう、極端な例えだけど、水戸黄門的「勧善懲悪」物語というか講談的なアナクロ風味まで私は感じてしまった。「おとっつあんのかたき!」「ひとつ斬っては妹のため……」みたいな情念の世界。「そりゃあんだけヒドイことされたら仕方ないよねェ」みたいな気持ちになって、レクターが復讐相手にほどこす殺戮方法も……誤解されそうですが、私は痛快に思えた。
 こっからキャスト雑感。レクター役のギャスパー・ウリエルは「怜悧」という形容詞がピッタリ、「なんでそんな強いの」というファンタジーを信じさせる表現力をすでに獲得している俳優だ。そしてコン・リー……どこまでこの女は強くなるのか。だいたい「レクターに武道を仕込む女」という時点で恐ろしい。「レディ・ムラサキ」という謎の日本人を演じてますが、もうこの手の「アメリカン・フィルターろ過済みジャパン・カルチャー」、私けっこう好きになってきたかも。こういうのに目くじらを立てるのは野暮ってもんだし、じゃあ日本できちんと「江戸の芸者・明治の奥方」を演じられる女優が今いるだろうか。英語力・演技力・スター性を兼ね備えたコン・リーに「どきなさいよ! こうやんのよ!」と啖呵張れる女優、うーん……見たいなあ。
 と、日本批判で終わるつもりはないのだけれど、ただ「こんなの日本じゃない!」という人いつも一定数いるが、そういうのを聞くたび、きちんとした着物文化やら日本家屋の継承・保存なんてもの、日本人が一番執着ないんじゃないか、と私は思っちゃうんだけどなあ。


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