映画と音楽、メモ的雑記
ビデオでフランス映画『読書する女』を見る。ミュウ・ミュウ主演、もう19年前の映画なんだなあ……と軽く戦慄。おおこわ。日常に転がっているなんでもないことが、見方によればとってもスットンキョウだったり、あり得ない偶然の産物だったり。そして人は気づかないうちに結構なドラマティックなことをしていたり、大層間抜けなことをしでかしていたり。ということを拾い集めた大人のためのコメディ。そしてコメディはいつでも悲劇に転化しうる、その逆もしかり、ということを淡々と描く。そう、人生って悲劇も喜劇もつねに淡々と起こっているんだよなあ。
なーどと小生意気な感想ですが、何よりも胸に残るのがオール・ベート-ベン・プログラムのサントラ。ピアノソナタ「テンペスト」第3楽章にはじまり、終わる演出、うーん……なんてカッコいいんだ!
フランス人ってクラシック音楽を現代劇にさりげなく、いやらしくなく効果的に使うのうまいですね。日本だとどうしても「借り物」感というか仰々しさが消えず、こうはいかない。うーん、ここで思い出すのはアニエス・ヴァルダ監督の『幸福』ですね。これもモーツァルトを非常にナチュラルに、さりげなく使っていて見事。この作曲家独得の「天国的なまでの幸福感、その裏にある冷徹さ」みたいなものまで感じさせて、凄い。
フランス映画音楽の大家、ミシェル・ルグランはこないだの来日時、映画音楽のことを「第2のダイアローグ」と語っていたのを思い出す。そして以前習っていたピアノ教師から、「音楽は耳で見る絵画、絵画は目で聴く音楽」という言葉を聞いたことも思い出す。視覚と聴覚って非常に溶け合いやすいもので……抽象的な表現だけど、水と氷と水蒸気の関係のようなものなのかもしれない。
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