3本の春巻

母・フジエの得意料理でもあった

先日久々に「終電」なるものに乗った。山手線の渋谷→新宿間。出口に向かって人混みの中を歩いていたら、階段の大きな手すりの上に何やらビニール袋がある。オウムの事件以来この手の袋ものには一瞬警戒してしまう、なんとも嫌な癖がついてしまったなあと思いつつフト見れば、それは3本の春巻であった。
そう、中華料理のあの春巻である。深夜1時過ぎ・新宿駅山手線ホーム・3本の春巻……落語の三題噺にでもなりそうな3つの交わらない名詞が見事にクロス。私は3秒ぐらいだが、オーバーな表現じゃなくフリーズしてしまった。向かいの中央線に滑り込もうと凄い形相で走る人、他の連絡線を逃すまいと疾風のように駆け抜ける人達にとってはさぞかし邪魔であったことだろう。いったいなぜ春巻がここに……誰かが「おみや」(どうでもいいが私この言葉けっこう好き。不思議に可愛い言葉だ)にして置き忘れたのだろうか。よく見たらワープロで「せいさんいりはるまき たべたらしぬで」とか書いたメモが置かれているのだろうか。もしくは人目を忍ぶ恋人同士が「明日の夜1時過ぎ、山手線池袋方面ホームに来てちょうだい……春巻の中に文(ふみ)をしたためて置いておきますわ……」「麗子さん悲しいね、僕達はサーバーに記録が残るからメールも使えやしない」「だからせめて私の手作り料理と共に恋文を……」「なんて君の作る春巻は美味しいんだ、今度は僕の作った餃子の中に文を入れておくからね」みたいな事情で「交換置き渡し恋文」でもやっているのだろうか。そんな妄想を抱きながら家路についた終電過ぎ。


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