「東京の空の下オムレツのにおいは流れる」

ポスターにしたくなる!

 素敵な本だなあ……おいしいもの好きの人には強力におススメしたい。と、いっても最早ごはんのことをあれこれ書いた本の中では、「名著」として評判高いものだ。知ってる人も多いだろうけど、シャンソン歌手、石井好子さんの「東京の空の下オムレツのにおいは流れる」という本。彼女は私の親世代や、現在50代ぐらいのまでの方には「食通」として有名な方だろう。私は彼女の仲良し、おすぎとピーコがテレビで「あんな食通は日本に少ない」と喧伝してるのを聞いてそのことを知った。

 食べ物の写真は一葉もない。詳しいレシピがあるわけでもない。けれど、なんて素晴らしい、おいしそうな本だろう。
 彼女が、心からおいしいと思ったものが淡々と紹介されていく。おいしいと思ったものを彼女は、連れ合いに、友人たちに作ってあげたいと思う。どうやったらあの味が再現できるかしら……心を砕き、トライしてみる石井さんの姿が、読んでいておのずと目に浮かぶ。カリスマ主婦だか何だか知らないけれど、やたら安っぽい言葉になってしまった「おもてなし」という言葉の本来の意味を、感じさせてくれる本だ。
 世界を旅する歌手活動から知りえた各国の料理、それらのくだりが特に楽しい。出会ったときの驚き、口に入れた感動、共に味わった人々の美しいこころ……安っぽい美辞麗句を一切使わない石井さんの表現が、かえって率直に心の動きを映しだす。「スペインの○○はとてもおいしかった。早速日本でも作ってみることにした」こんなシンプルな表現こそが、この見巧者ならぬ食巧者のこころをどれだけ動かしたか、とてもよく感じさせる。
 この本をこころから楽しんで、味わえる人こそ、「おいしいもの大好き」といえる人じゃないだろうか。花森安治、渡辺ゆきえの両氏による装幀・装画も素晴らしい。


○追記
明日もしかしたらネタにするかもですが……若尾文子さんの出馬には心底ビックリしました。というか……妻の誉れというか、あくまでも夫・黒川紀章に追従するのですね。うーん……あそこまで女優として極め栄光を手にした人が……ファンとしては晩節を(失礼!)汚さないように祈るのみだ。


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