映画 『ラッキー・ユー』

日本行脚が終わったら世界だろうな……

 今月23日の公開映画に関して、今日はちょっとメモしておきたい。『L.A.コンフィデンシャル』『イン・ハー・シューズ』のカーティス・ハンソン監督作『ラッキー・ユー』という映画について。ラスベガスを舞台に、ひとりのギャンブラー(エリック・バナ)が勝負と恋愛によって成長する姿を描く、というのがおーまかなスジなんだけど……乱暴に言い切っちゃうとこの映画、まんまポーカー版「美味しんぼ」inラスベガスなんですよ。週刊漫画誌「スピリッツ」に連載中の長寿人気漫画、「美味しんぼ」はご存知の人も多いと思う。

 主人公・ハックは小さい頃から、ポーカー世界チャンピオンの父に仕込まれてきた。天才的な才能と技術を持っているが、精神面でまだまだ未熟。現在も凄腕ギャンブラーとして活躍する父は家庭を顧みず、母に苦労をかけっぱなしで死なせた……とハックは思い込んでいる。そう、まんま山岡士郎海原雄山なんですね。そういう意味で「ありがちな父子葛藤ドラマ」なんだが、演じるロバート・デュバル(『地獄の黙示録』)とエリック・バナ(『ミュンヘン』)はサラリとしつつ、それでいて過去に共有してきた奇妙な親子関係をキッチリ感じさせていて、好演だったと思う。
 と、いうのはすべて前説なんですねー。私が唸ったのは、なんといっても栗田ゆう子的存在であるドリュー・バリモア、その「きらめき」に他ならない。
 この女優のすごいところは、「カワイーッ!」と「ブスーッ!」を行ったり来たり、そのドライブ感の緩急自在なところだ。エリック・バナと何回か会って話をしていくうち、恋に落ちていく彼女の顔がどんどん魅力的なものになっていく。変な表現だけど、小学校の頃、理科の時間に見た「発芽から開花まで」ビデオみたい。みるみるうちに、まさに花開くように表情は華やぎ、恋する女の可愛らしさ、幸福感をたたえていく。特にこの女優の「破顔一笑」、そのキュートさはただごとじゃないですね。もうそれだけで、ひとつのドラマティックな瞬間だ。好きな人に見せる「ワーイ!」という喜びの笑顔、もう破顔というよりエクスプロージョン!「こぼれるような笑顔」という意味がよーく分かる。
 それが一転、裏切られたり失望させられたときには、一挙にすんごいドブス顔へ(笑)。さっきの可愛らしさはみじんもなく、「キライよ!」と吠え付く様は凶暴な犬のよう。この女優は、いい意味でいつまでも子供のように泣き、笑い、コロコロ表情を変化させる。そんな彼女の、ジェットコースターのような心の動きを見守るのは中々に楽しい。気がつけば親友の子供を見ているような気分にさせる、不思議な女優だ。


○追記
どーでもいいのですが、この映画のロバート・デュバルが私には往年の名ピアニスト、ミケランジェリに見えて仕方なかった。同様の感想を持ったクラシックファンいないかなあ……。本当に蛇足ですね、失礼しました。

『ラッキー・ユー』公式HP→http://wwws.warnerbros.co.jp/luckyyou/(ちょっとしてから動画になります)


●お知らせ
ブログランキングに登録。 どうか1日1クリック↓を。
http://blog.with2.net/link.php?198815
ご意見などはこちら→hakuo-a@hotmail.co.jp