いまいちど、「どんど晴れ」

比嘉愛未

 先日、「面白くなってきてるなあ、主役が輝いてきてるなあ!」と褒めたNHK朝ドラ「どんど晴れ」ですが……いやー訂正します(笑)。なんですかねえ、ここにきていきなりトーンダウンというか、精彩を欠いた出来になっちゃってます。ああ、もったいない!
 以前も書いたように、連ドラのヒロインというのは演技の巧拙を超えた存在だと思っている。
(参照:http://d.hatena.ne.jp/hakuouatsushi/20070718
その役に自然にノッて、成り切っちゃえるかどうかが、命(いのち)なんだ。いやらしさのないひたむきさ、若い娘さん特有の嫌味のない一生懸命さ、みたいなものが「役」とオーバーラップしたとき、その作品はグーンと面白くなり、ヒットするんじゃないだろうか。(上手い下手でなく「俳優と役」が見事合致した最高峰は、古すぎる例えですが「澪つくし」における沢口靖子、これですね)
 ところがねえ……最近の「どんど晴れ」は「男のドラマ」にミョーにシフトしちゃってるんですよ、内田朝陽やら東幹久演じる支配人たちのおはなしに。これが、はっきりいってつまらない。何がつまらないってジャストシンプル、余りにも王道のパターンで「ありがち」な話なんだもの。因習的な旅館経営を変えるべく、カルロス・ゴーンのように改革案を断行しまくる内田朝陽、そして反発する古参連中との確執……。先週から今週にかけて、私が一番呟いていた言葉は「見える……」、これですね。まるで自分が「奇跡の扉 TVのチカラ」に出てくるFBI超能力捜査官になったかのよう。「うん、ここで東幹久がイヤミ言うはず」「そしてあき竹城がとどめの一言」「あとで蟹江敬三の息子が暴れるに違いない……」もうほぼ全部当たり。行方不明者探してみようかしらん。ああ、若女将の地位をかけて白石美帆(with あき竹城率いる古参軍団)と比嘉愛未がライバル関係を見せていた頃は面白かったのになあ!
 いや、若女将対決も至極ありがちな展開だったんですよ。でもねえ、世阿弥じゃないが「時分の花」のある人がやる場合に限り、「ベタ」は面白いと思う。許されると思う。先に書いたように、比嘉愛未は今ヒロインとして、役と自分がうまく一体化している。ノッている。こーいうときにもっとヒロイン主体にした話をしないでドーするんだ!? せっかく「ひたむきなヒロイン」という「ドラマティックな虚像」がリアリティを持っている今を、なーんでもっと大事にしないのだろう。ひたむきで、へこたれないポジティブな女の子――視聴者というのは、この手のヒロインが土石流のような不幸・困難にさらされるのが大好きだというのに。脚本の小松江里子さんはそこを分かってらっしゃらない。余計なお世話だが……ああ、もったいない!


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