愚にもつかない参院選雑感・1

右の方は辞任、左は続投

 選挙ネタ、ってのは恐ろしいものだ。政治に対する深い、偏りのない理解と洞察があったとしても、それすなわち「面白いよみもの」になるとは限らない。そしてまたフザけるとしても、誤解やリスク(ここ大事ね)を怖れず、とことんアナーキーに突っ走らないとこれまた成立しない。どっちに転んでも自分の浅学非才、もしくは売文芸人としての度胸のなさ、切れの悪さを露呈するだけのような気がする……。しかしねえ、ブログという形態でライターという看板を掲げておきながら、この日の記録に選挙をスルーして書くわけにはいかないよなあ。その日一番の、私なりの関心事であったことには間違いないんだもの。私が私なりに胸に浮かんだテレビ雑記ですが、正直に書き留めておきたい。ええ、嘲笑は覚悟の上ですが、やってみますか。

と、大上段に構えても所詮はテレビ雑記。私はTBSを視聴のベースに決めて見ていた。とにもかくにも速報と党関係者のコメントを伝える、というスッキリとした構成が見やすく、好感の持てる内容だったと思う。「選挙トリビア」と題して「片山さつきの飼っているペットの名前は、じゅんちゃんである」(ご丁寧に本人出演のVTRまであった)などとハンパなふざけ具合が見苦しかったフジテレビ、島田紳介村尾信尚NEWS ZEROのキャスター)のキャラがうまく融合せず不完全燃焼に終わった日本テレビ、途中から参入の田原総一朗が完全に「ひとり朝まで生テレビ」状態となり、古館伊知郎の存在意義が見事消え去ったテレビ朝日と比べ、全般的に安定した出来であった。三雲孝江、杉尾秀哉、小倉弘子といった「イブニング・ファイブ」派閥でまとめたのが良かったんでしょうねえ。
 しかし、である。ヘッドを務めた鳥越俊太郎には……うーんいやはや感動しちゃいましたよ。あれほど速報性と機転の必要とされる選挙速報特番において、ここまで「家でテレビを見ているお父さん」のような落ち着き、そしてのんびり感を醸し出した人を私は知らない。「みんな孝江ちゃんがやってくれるから大丈夫」とでも本気で思っていたんじゃないだろうか。ほぼ何もせず、たまに凡庸な質問を(台本どおり? としか思えないありきたりなものばかり)候補者、党代表に形式的に投げかけるだけだった。末期がんをおして選挙に臨んだ候補のVTRなど、完全に感情移入して(ご自身のことと重ねられていたのだろうが)「鑑賞」しちゃってるんだもの。ジンワリ涙まで浮かべていたようだった。いやさー分かるけどさー、一応報道人なんだから(笑)。やっぱ「文字」の人ですね(彼は元サンデー毎日編集長)、声だけ出演だが、筑紫哲也元朝日新聞政治記者)はさすがの貫禄でキレのある質問をポイントポイントで投げかけ、存在感を見せていた。
 そんな鳥越に業を煮やしたのかは知らないが、サブの杉尾秀哉が後半どんどんセルフ・ズームアップ。公明党太田昭宏代表に対し「自民党に足を引っ張られたというお気持ち、正直ないですか」という鋭い突っ込みを突然かまして見事だった。ここまで大敗した自民との連立政権をどうするのか、という問いに対し空虚に「安倍政権が国民に拒否されたわけではない、と思っている」と繰り返す太田代表にいきなりの変化球。私は、このソフトな面持ちのジェントルマンがたまに牙を剥く瞬間が好きだ。なおかつ蛇足を加えると、その脇でシラーッと眉ひとつ動かさない三雲孝江の老練なる微笑……もう堪りませんね(笑)。この二人には、エレガンスという包装紙にピッチリ包まれたサディズムが胸の中にしまわれている。たまに見え隠れするその毒が、私は好きだ。
(三雲さんの素晴らしいまなざしを捕らえた一枚)

 さて20時台からはじまった報道特番合戦ですが……さすがテレビ東京は分かってらっしゃいますね自分の持ち味を。当然のように「どん底旅館奮戦記」と題して、伊豆の旅館女将の苦悩やら何やら放映してました。リポーターは「ミスターちん」というキャスティングも完璧。しかもちょっと見ないうちに白髪まじりになっちゃってまぁ……「テレ東+選挙日の旅番組+白髪のちん」という絶妙のブレンド、「無常」とか「もののあわれ」すら感じさせます。と、思えばフジテレビもSMAPがボーリングに興じているではありませんか。ある意味製作サイドの英断ですが、ある意味ジャニーズって仕事を選ばないなあ。孫悟空に扮した香取慎吾が「ウッキ―!」みたいな笑顔をたたえてストライクを狙う図と交互して「自民党内が楽観視し過ぎたことが敗因」と語る真面目な舛添要一の姿が他局に。なんだか……すごい相乗効果。ひょっとしてフジは「参院選がどうなったって安倍政権変わらないじゃーん」とかいうアンチテーゼを投げかけているのだろうか!? なんてね。
 というか長いですねぇ……やっぱり。これ、明日に続きます。


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