勝新太郎化するのか若尾文子

「夫が見た」が好きだった

 しかし、ここまで落選してメディアに取り上げられる人もないだろう。選挙結果後2〜3日、かのお方の名はテレビに新聞に、まあよく出ていらした。とあるスポーツ新聞は「今回のことで若い層にも名が浸透した。あの浮世離れしたキャラは、テレビのコメンテーターとしてこれからオファーが殺到するのではないだろうか」との記事も。うーん……ありえなくはないなあ。リアリティあるなあ。と、ここで私はあるひとりの男を思い出す。後期の勝新太郎が、まさにそういうポジションにいた。

 勝新太郎は映画の衰退、勝プロダクションの経営破綻と共に、その「芸」を発揮する場所を失っていた。そんな勝が一挙にクローズアップされたきっかけは、確か15年前ぐらい。ウロ覚えで書くが、あれは「エスクァイヤ」だったろうか、勝新太郎の大特集があった(確かそのときのキャッチは「男根役者 勝新太郎」だったはず)。勝新太郎の「芸」はさておき、「人」が注目されたのだ。その後、いろんな雑誌や深夜番組などで勝新太郎がゲストに迎えられた。黄金時代の映画人らしい、鷹揚で時代ズレしたキャラクターが、(あえて軽い言葉で書くが)ウケた。いまどき本気で電車にも乗れず、お金なんて持ったことはない。すべて面倒くさいことは女房と周囲任せ(そして、それは「タレント」中村玉緒にスポットライトを浴びせるきっかけにもなった)、しかし芸は(ほとんどの人が実際見たことなかったと思うが)一流、と周囲から絶賛される。北野武が手放しで絶賛していたのも追い風になった。このなんだか厄介そうなオジサンって、すごいらしい……そんなイメージが出来上がった。多くの人に「情報」として、「すごい芸の持ち主」「大御所」「何やってももうOKな人」というイメージが伝わった。彼はコメンテーターなどやることはなかったが、「ちょっと危なげな面白いオジサン」というキャラを見せるのみで、話題にはなったとて実芸のほうを発揮する機会は少なかったんじゃないだろうか。


 若尾文子の選挙戦を追った特集VTRが開票翌日、テレビ朝日で流された。その言動の数々は、「今だから言いますが、受かったらどうしようかと思っておりました」という言葉ひとつ紹介しても、想像できるものでしょう。ひたすら太陽を浴びることを恐れるアヤコ様。写真撮影を「聞いていない」今日は撮られるような格好じゃないの、と拒否するアヤコ様(カメラマンから上がった「おいおい……」という眉間に皺のよった声が忘れられない)。でも……うーん何なんでしょうね、何十年と女優張ってきている人特有というのか、「しょうがないじゃないアヤコだもの」と納得させるだけのチャーム、というかオーラというか、それに包まれている彼女には「呆れる」というのを通り越した何かがある。(この辺については若尾語録と共に次回別にまとめます) 
 大体、受かろうと思ってないのに立候補するだなんて、常人がやったら反感買うでしょう、怒られるよなあ。そこクリアしてるだけで、凄い。その呆れるを通り越した「何か」、常人なら怒られることをしてもクリアできる「何か」は、勝新太郎と共通するひとつの個性なんだと思う。だが、その「何か」だけがウケて求められるのって、どうよ。「ワイドショーに引っ張りだこ」って、要は「その世間ズレしたとこひとつ、お願いします!」みたいな狙いでしょう。一緒にしちゃいけない例えだと思うが、「デヴィ夫人巣鴨の商店街で初のお買い物」みたいな企画と同様(TBS「ぴったんこカン☆カン」で実際に放送。商店街で買い物なんて初めて、と根本七保子時代を完全に「なかったこと」として発言するデヴィが眩しかった企画)。ああ……めまいしそうなぐらい、安い。いっそのこと「格付けしあう女たち」みたいな企画で若尾、岡田茉莉子八千草薫岩下志麻司葉子浅丘ルリ子とか大女優そろえて「最も一般的な金銭感覚のなさそうな女は誰?」ぐらいの豪華大作やってくれないもんだろうか。スタッフの気苦労すっごく多そうだけど。大女優で面白がるなら、そのぐらいのスケールでやってほしい。いや、嘘。


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