出稼ぎか、「横綱」か ―朝青龍問題―

愛称はドルジ

 一大関心事なんですね、朝青龍問題って。ここ3日間ほどのワイドショーでは常にトップニュース、ことの是非をめぐってコメンテーターたちが喧々諤々を繰り返している。
(誰でも知ってるでしょうが、一応記録として。横綱朝青龍は骨折を理由に巡業を休場、帰国療養していたが、地元のサッカー大会に参加。どう好意的に見てあげても、ちょっとけが人とは思えない走りっぷり、ヘディングを決める映像が流出してしまい問題になった)
 うーん……自分ってつまらない人間だなあ、としみじみ思う事件でした。他の誰もが感じているであろうよーなことしか湧いてこない。その意見ってのがまた「先生、きよし君が今日の掃除をサボってました!」と懐かしの「帰りの会」でチクる真面目女子みたいな意見なんだこれが。でもまあ……こんなこと思っていたという記録的にちょっと列記してみたい。長いよー。


○感想の泉 1:「ロイヤル・デューティ」を知らんのか!?
または「ノブレス・オブリージュ」なんていわれますね、聖なる義務。高貴なる身分にあるものはそれだけの責務がある、というよく王族・皇室問題で使われるフレーズですが、「横綱」と「勝利を多くおさめた野球監督」(そしてその経験者)という地位は、日本スポーツ界において王族に近い意味合いがあると思うので。ま、この辺のことをふまえて「横綱はたんなるトップという意味じゃない! そこを教えてんのか親方は!」という怒りが世間で噴出してるんだろうなあ。ああ、そんな人達と一緒の精神構造だったのか、私。


○感想の泉 2:叩きたかったんだね、マスコミ
叩く相手は横綱、しかも罪状は「職務放棄」。もう相手充分、こと充分というマスコミの舌なめずりが聞こえてきそう。世間的に強者であればあるほどバッシングしがいがあるものね。そして今までもヒール的存在だった朝青龍、「禍根は深いんだなあ」とシミジミ思った。勝手な推量だけど、この人のことをずっと嫌いだった人、根深くマスコミにいたんだなあと、すっごく感じた。「親方をないがしろにするような言動、許せん」とか「好き勝手やりやがって……」と腹の底で忸怩たる思いでいたスポーツデスク、関係者が多かったんじゃないだろうか。連日の報道の裏に、そんなことも感じてしまう。


○感想の泉 3:「うつ」とか「ストレス」大安売り
あるワイドショーでの視聴者からのFAX「あの、最近まで元気に走り回ってた人が突然『うつ』になるもんなんでしょうか……」という直球な意見、笑わせていただきました。この方が市井の意見を素晴らしく代表していますね、私も一緒。(最終的には「急性ストレス障害」なる病名に決定) なんだかねえ……今「うつ」って本来の意味を外れて免罪符みたいになっちゃってるなあ。そういう風潮、本当に「うつ」で苦しんでる人たちの首を絞めるんじゃないかなあ。映画監督の井筒和幸氏が「自分も同じような状況にあったからわかる。すぐ帰してあげたほうがいい」と擁護発言を出していたのはちょっと驚きだったが、「甘すぎやしないか!?」と、やっぱり思っちゃう。ああ……凡庸な意見!! やだなあ、大島巡業部長でしたか、「汗かけば治る!」と発言した人と一緒みたいで。うーん、でもなあ。
 私の友人(朝青龍と同年代)も抑うつ状態でヒジョーに苦しんでいたが、向精神薬飲みながら会社行ってたぞー。毎月死ぬ思いしながら月刊誌出してたけどなあ。それでもやり遂げてたけどね、自分の責任の仕事。「いや、一般人と横綱はストレスの格が違うよ。大事にしてもらわないと」なんて意見、それこそ認めない。それこそ「ロイヤル・デューティ」じゃあないか。本当に同情心のない意見だと思うが、そこまで精神性が弱かったら、横綱でいちゃいけないと思うけどね。心技体そろっての横綱じゃあないか……ってドンドン「頑固オヤジ」みたいな意見だ、イヤだなあ。超保守派だったんですね、私。
(あ、どーでもいいが「帰国容認派」の人ってのはやっぱり、「雅子妃」に対しても「もっと海外へ」「里帰りさせたらどうか」と思うのだろうか。ちょっと聞いてみたい)


 朝青龍はどうするのかなあ。徹底的な強さを求めて(彼なりのやり方で)邁進してきたのは事実だと思う。強いもの、ホントに。けれど、ここで日本的メンタリズムを取り入れてうまくやっていく道を選ぶのか、あくまで「出稼ぎ」というスタンスを崩さないまま生きるのか。そして相撲協会は帰国を許すのか、許さないのか。これら決定によっては、将来的に相撲も「PRIDE」みたいに「強さ追求」というその一点に眼目を置く「シロモノ」に変質するきっかけになると思う。


○追記
 弁護士の大澤孝征氏のコメントが一番印象的だった。「強ければいいだろう、という考え方を感じてしまう。最近多い事件だが、『勉強できればいいだろう』というふうに育ってしまい、それで許されていた子が、世間の風に当たって挫折、問題を起こしてしまう構造に似ている」メモできなかったので正確ではないが、こんなことを言ってらした。卓見だと思う。


○追記2
朝青龍の父「サッカーに出ただけなのに、しかも怪我をおして地元のイベントに参加したというのに、なぜ責める?」という意見に対し、母は「ルールを破ったのだから当然の報い」と180度違う意見。これまた印象的。


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