「家日和」奥田英朗:著

なんとなく飾ってみました

 タイトルがすべてを表している。「家」というものだけが持ちえる、お日様のような温かさ、優しさに心和む6つの短編集だ。子供は親離れが進み、亭主ともさして会話のない主婦がハマるネット・オークション。「ロハス」熱に浮かされる妻に不安を抱く夫。リストラされて家事専門になる夫、復職する妻……取り上げられるテーマはどれも、「お隣の誰かさん」的なものばかり。一歩進んでいうなら、もう既にどこかで小説なりドラマになったようなものでしかない。
 しかしそれが、リアリティのなさや、読み進める面白さの欠如には繋がらない。この短編集のそれぞれの主人公は皆、短いページ数の間に「青い鳥」体験をする。ネット・オークションで高評価を得て、知らない人から感謝され褒められたり。突然のリストラで主夫業を体験してみると、存外楽しく、自分に合っていると感じたり。「自分の価値は違うところにあるのではないか?」そんな心の「旅」を経験する。そのとき彼らが再認識する「家族」というもの――「私の幸せはいったいどこに?」
 この作品に出てくる人々は、決して変に屈折してない。ねじ曲がっていない。そこが「嘘くさい」「現実はこんなもんじゃないわ」と思う人も、ひょっとしたらいるかもしれない。しかし、奥田英朗という人が描く世界は純粋に楽しく、「人の温かさって、嬉しいものだなあ」と素直に読ませる巧さがある。昭和50年代の平岩弓枝が描いた「ホームドラマ」に通ずる現代人情劇のような、そんな暖かみを私は感じた。「お母さん、おめでとう」忘れられていると思っていた誕生日に突然の祝福。主夫をしてみてわかった妻の目立たない苦労。日頃聞こえていなかった「青い鳥」のさえずりが響いた瞬間、主人公達の胸に溢れるあたたかな気持ち。こういった感情を素直に表現でき、読み手に感じさせるというのは難しいことだ。作家として「てらい」のない綺麗な書き進めぶりに、私は感じ入った。


○今日は何の日
台風が日本の真下に! 大気が不安定なのがよーく分かる空。もんもこと、厚い雲が広がり、ほの暗い空が不気味。直撃は免れなさそう。一日中家で過ごす。ウディ・アレンのかなり昔の作品『スターダスト・メモリー』を観る。あくまで私の主張だけれど、「ウディ・アレンの作品は、彼が出演していなければ素晴らしい!」これがまたひとつ証明されたなあ、という作品。


○お知らせ
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