「点と線」雑感その2

不思議に合うふたり

いやはや、ラッグジュアリーなドラマでした。たった1シーンだけでも、名だたる俳優がゾクゾク出演。そこで悪目立ちしようとせず(存在感を誇示しない、ってことね)、役の「分」をわきまえてドラマを盛り立てようとする品の良さが、この作品をより良いものにしたと思う。そういう忘れ難い演技を残した方々を列記。
市原悦子
最近は主演者のイメージが強いが、今回のような「しどころのある」バイプレーヤーをやらせたら天下一品。「場面さらい」というのか、その瞬間は彼女が主役になっちゃうほどの強烈なキャラクターを演じさせると無比の巧さ、素晴らしいスパイスになる。被害者の母親を彼女が演じたことで、深いコクが物語に生まれた。「オイスターソース」みたいな女優である。
名高達男
いきなりフザけますが……この人の顔見ると私、なぜか「ジオラマ」って言葉が胸に……。パテを使ったとしか思えない、見事に盛り上がった造形のお顔立ち。レゴブロックとかで似顔絵作れそう。あ、演技に触れてない。それだけ印象的だったってことです。しかし老けないなあ達男……若いころから変わらないその面差し、驚異的ですらある。藤岡弘とか尾崎紀世彦とか、濃い顔立ちの人って老けにくいのだろうか。なぜか今「田中義剛も」という心の声が聞こえたが、封印する。
かたせ梨乃
1シーン出演中、最優秀助演女優賞。演じたのは待合の女将。犯人が泊まったことを追求されシラを切るも、隠し切れないと観念した瞬間「ええ……泊まりましたよぉ」と居直る、その「すれっからした」情感が最高! 思わずテレビに向かって「待ってました!」「真打ち!」と声かけちゃったくらい。
 以前とある試写会でお見かけしたが、一部の隙もなくブローされた漆黒の髪、ジャガーのロングファー、そしてその裾からのぞく網タイツにくるまれた美脚……完璧なまでに「ザッツ・女優」であった。こーいうタイプもある意味「昭和系」である。
伊佐山ひろ子
「いるだけでいい」という凄さですね。ちっとも本筋には深く絡まない役(アパートの大家、「そんな人来ませんでしたよぉ」とか言うだけ)なんだけど、この人が出るだけで話の厚みが増す。何年にもわたって、色んな店子の人生模様見てきた「断層」みたいなものが滲み出る面白さ。
 タレント名鑑からいただきましたが、はっきりいって時間が止まってます。ずるい。昔の写真連続使用に関してはもはや「歌舞伎役者」の域です。しかし、こーいう「やつれた色気」というか、「おとこずきのする」と言われちゃうタイプの女って減りましたねえ。昔でいうと白川和子、緑魔子宮下順子永島暎子といった面々。いまなら鈴木砂羽だろうか。


 そのほか、田舎生まれのダンサーを演じた高橋由美子、航空会社の社員を演じた天宮良が秀逸な演技を残した。本筋に関係ないところで、邪魔にならずに印象を残す。その役の「人となり」を感じさせる、というのが演技者として最高級の仕事だと私は思う。二人ともたいして「しどころ」もない役だったが、この二人はそういう難しいことをやっていた。拍手を送りたい。 あと、夏川結衣の家でお手伝いさんをやっていたご婦人が非常に巧かった。HPのキャスト表にも名前が出ていないような役だが、心から喝采。あ……高橋克典のこと書くんだった。長いので明日。


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