「おとなの週末」&最近のビデオ雑記

酒好きなら読んでって

 随分発売から日にちが経ってしまいましたが、現在発売中の「おとなの週末」で居酒屋特集に参加させていただきました。
 私が取材したのは大塚の「こなから」、学芸大学の「件」、そして池袋の「坐唯杏」(ざいあん)です。本文中には入れられなかったけど、この「坐唯杏」の店名の由来が面白い。読んで字のごとく、「ただボーっと杏の木の下で座っていただき、口をあけて待っているような気持ちで来てほしい」という意味合いなんだそう。
 仏教的なニュアンスもありながら、熟れてたわわになった杏の実がポトリと落ちてくるような、のどかな情景が目に浮かぶ。まあ、店内はそんな小難しい由来を説明するでもなく、楽しい居酒屋さんです。
 いずれも日本酒に一家言ある店主ばかり、お好きな方はどうぞ手にとってみてください。
 今日は最近のビデオ雑記を。


最近のビデオ雑記


○「制覇」(1982 監督:中島貞夫
 冒頭、岡田茉莉子先生のドアップからはじまります(写真参照)。煮干のワタを取り除きつつ、「味噌汁はこれが肝心なのよ、いい?」と、さもすごいことのように娘の中井貴恵に伝授してますが、そんなたいしたことじゃありません。

 名作「秋刀魚の味」で佐田啓二と夫婦役を演じたのが茉莉子だったなあ…その娘と20年後に親子役をやっているという面白さ、うーん……などと思っていると突如にしきのあきら(当時)が三船敏郎を「ズキューン!」と暗殺未遂。抗争の勃発です!
内容を簡単にいうと、ヤクザ一家の「喜びも悲しみも幾年月」。灯台守をヤクザに、監督を木下恵介から中島貞夫に帰るだけでアラ不思議、ここまでテイストも内容も変わるなんて……。組長が三船、極妻が茉莉子、娘が貴恵で恋人が名高達郎(当時)、兄嫁が秋吉久美子。なんちゅう濃い一家……。
 そして子分に菅原文太(妻が松尾嘉代)、若山富三郎、その他ヤクザのみなさんが小林旭丹波哲郎岸田森。下っ端で清水健太郎、その情婦に大信田礼子、三船の主治医に鶴田浩二……ありえないぐらい直球配役です。特に大信田礼子さんは「お手本」のような情婦演技、ぶたれても蹴られても失恋レストランに尽くします。報われないのに……。
 全体的には、超豪華キャストにありがちな結果で映画としてのまとまりはイマイチ。でも個々の役者にその芸の見せどこがあって、それを見るだけでも楽しめます。ある意味「おせち」みたいでお正月向けかも。
 岡田茉莉子先生。その昔「美顔器」のCMのイメージキャラクターでもらっしゃいました。


○「家族」(1970年 監督:山田洋次
九州・長崎の小さな村の一家が、北海道に入植すべく汽車で旅するロード・ムービー。倍賞千恵子に「下町の太陽」と名づけた人は誰なんだろう、天才的コピーライターじゃなかろうか。ひそやかな、ヒナギクの花のようでありながら、明るさと善意が常にキラキラと溢れ出すその特質。そんな彼女が子供を失い悲嘆にくれる、そのドラマティックなこと! 随所に現れる37年前の日本。私が「37年」という年月を「大昔じゃん」と思えたのは何歳までだったろう。
 1シーンだけの登場ですが場面を思いっきりさらっていく「春川ますみ」。好きなんだわ……この女優。こんな若い娘さんの「こしらえ」は初めて見る。なんとこの下ミニスカートですよみなさん!  ますみファンなら必見。「赤かぶ検事」の女房役とか好きだったなあ。最近トンとお出にならないが、元気でいらっしゃるのだろうか。


○「洲崎パラダイス」(1956年 監督:川島雄三
「場末の酒場」というものがどーいうところか、心の底から理解させてくれる作品。だが主演の新珠三千代、演技は確かに「はすっぱ」そのもの、だらしなくて情けない女を表現しているのだけど「姿」が良すぎてしまう。昔流にいうなら「ようすがよく」て、洲崎あたりの色町らしい、だらしない着付けをしてもどこか粋。リアルにやるなら「中北千枝子」とかが適役なんだろうが、まあこれが「映画の嘘」ってもんでしょう。

 新珠三千代。楚々、清楚、たおやかといった完全に死語である日本語の形容詞でよく飾られる人だった。


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