赤子の口にテープ――「情操」ということ

どうかやすらかに

 どうして。つまるところ、こんな言葉しか出てこない。大阪・守口市の事件、あまりにもむご過ぎて、ショックこの上ない。
 シンプルな事件といえば、事件だ。泥棒が入って、家にいたお母さんと子供を縛り、粘着テープを口に貼って、逃げた。奪ったものは、5万円。
 こういった事件は、(いやなことだが)ままある。しかし、この子供は生後2週間だった。夜遅く帰ってきた祖母が発見し、二人は病院に搬送された。
 母は助かり、子供は死んだ。母親は無事、というのが聞くだに、つらい。目の前で――。


 決定的に根本的な「情操」というものが、変質しているような、傾いているような、大きな怖さ、気持ち悪さを感じてしまう。
 情操――道徳や美的感動、根本的な善悪観念、そのすべてを包括する言葉だ。そのへんって、とっても言葉にしがたいものでもある(それを言葉にしたり、絵にしたり、と具現化することが芸術であるわけなんだけど)。
 しかし、根本的に人間が持っている感覚・センス、そういった「ぼんやりとしたもの」って、ひとつ共通のものだと思っていた。うまくいえないけど……大きな空、夕焼け、大海原、星空とかと自分が対峙したときに、「きれいだなあ……」と思う気持ち、そのあとに、ぼんやりと「ありがたいなあ……」という気持ちになったこと、ないだろうか。
 それが「情操」だと私は思う。そこを忘れなければ、基本的には絶対間違った方向にいかないと思う。しかし、そのへんのコンセンサスが思いっきりシェイクされるような事件ばかり続く。


 「脅してでも交際を」といって片思いの相手・女性店長を殺した49歳の男。親兄弟しか「殺せなかった」八戸市の18歳。うるさいからといって、幼児の口を塞いで死なせてしまった親……。
 うーーん……私が最近すごく感じるのは、「自分がないんだろうなあ」ということだ。へんな言い方。うーん……自分を大事にしなさ過ぎる、というか。自分が可愛くないのか、というか。だって、罪と罰のバランスが悪すぎる事件、多すぎませんか。あまりにも激情に一途で……そこまでみんな、「かけがえのないもの」を心に持てないもんか。分からない。こういうふうに書くと、「おめえは幸せだったんだよ!」とツバを吹きかけたくなる人もいるかもしれないが……。
 ただ、赤ちゃんにテープを貼る……なぜそんな必要が。死ぬかも、とすら想像できないのだろうか。なぜ、としか思い浮かばない。死後、さぞかし地獄で苦しむだろう。そう思うぐらいしかなく、ただやるせない。


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