『さよなら。いつかわかること』

4月26日公開

 ジョン・キューザック。私と同世代の人なら、懐かしい名前じゃないだろうか。『シュア・シング』や『セイ・エニシング』とか、好きだったなあ。私が映画にハマリだした80年代後半、その当時を飾ったスターが、今でも主演を張っている。それだけで何となく、嬉しい。ひとごとながら、ニッコリしてしまう。ましてやそれが佳作なら、なおのことだ。
 今回彼が演じたのは、二人の少女を持つお父さん。奥さんは、兵士としてイラクに派兵されている。そしてある朝突然に受けた、戦死の知らせ。呆然とする彼―――ショックのあまり電話にも出られない。留守番電話から響く応答メッセージは、生々しい妻の声。そこに学校から帰ってきた娘ふたり。「どうしたの、お父さん?」

 ジョン・キューザックは昔から、思いをうまく伝えられないキャラクターが似合う。ナイーヴで、内向的で、センシティヴで。それは、ジェームス・ディーンのようなスター性や脆さまでを内包するものではなかった。けれど、そのかわり都会的なインテリジェンスが、彼にはある。自分の中の「モヤモヤ」を、時間をかけて見つめ、克服していくといった「強さ」とも言い換えられる、知性的なニュアンス。
 今回の彼は、妻の死を中々受け止められず、そしてそれを娘に伝えられない父親を、非常に的確に演じた。あとちょっとでも過剰に演じたら、だらしなく、情けない父親として、観客から嫌われる男になったと思う。やりすぎないバランス感覚というか、オーバーになり過ぎない演技の塩梅をとるのが、この人は昔から上手だ。それは、監督ジェームズ・C・ストラウスのセンスのよさもあるだろう。単なる反戦映画、メッセージ性の強い映画ではない。さりとて、お涙頂戴、濃厚ヒューマンドラマでもさらさらない。家族が死ぬ、それも突然死ぬというシチュエーションを、非常に丁寧に、とても品良く描いた作品だ。クリント・イーストウッドが担当した音楽も、さすがの出来ばえで素晴らしく、また85分という尺もいい。上映時間は長くないけど、時間は濃密。地味な作品だけれど、傑作だと思う。


 最近のジョン・キューザック。『セイ・エニシング』観たのが14歳のときか……幾星霜。どうでもいいが、あのときの相手役アイオン・スカイも、アイオン・スカイ・レイッチという名前で今でも頑張っている。最近だとファレリー兄弟の『2番目のキス』に出ていた。80年代青春映画に出ていた人で、しかもカップル役をやった二人がまだサバイバルしているって、中々ないかも。


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