劉翔の「目」

記録は13秒19

 ハングリー! 彼がゴールした瞬間、最初に口を突いて出た言葉がこれ。なんてハングリーな「目」だろうか。圧倒された。飢えたけものが、久しぶりに獲物を見つけたときのような「眼」。ハングリーな気迫が体中から立ち昇り、「勝利」というターゲットを狙う殺人者のよう。気圧(けお)された。呆気にとられた。私はフトつけたテレビから、眼が離せなかった。
国際グランプリ大阪大会・百十メートル障害優勝者、劉翔――5連覇というから相当有名な人なんだろう。スポーツまるっきり疎いので知らなかったが、いやぁ………………まったくもって、凄い人がいるもんだ。


 失礼を承知で書くが、走っているときの彼は「蛮」そのもの、という気がする。野蛮、蛮勇、蛮族……人間が捨ててきた本能、闘争精神、直情、そういったものを思い出させるような、プリミティヴなパワーの湧出――そういったものを、劉翔の走りから感じてしまう。
 「スポーツ」という言葉が持つ、どこか爽やかだったり、フェアだったり、「参加することに意義が……」的精神を、一笑に付して、歯牙にもかけないような、劉翔の走り(彼がそういうことをいっているわけでは勿論ない。私の勝手な感想である)。ただ、最近流行の「大会を楽しみたい」というようなコメントを、劉翔はどう聞くだろう。
「ありえない」というだろうか。
「僕が一番楽しんでいるよ」と答えるだろうか。そこが激しく、知りたい。
 劉翔の走っているときの目――これだけで、そこいらの映画などより遥かにドラマティックこの上ない! 古い表現だが、「まなじりを決する」という言葉が、おのずと心に浮かんだ。


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