祝・仲直り 「美味しんぼ」のこと

いけるとこまでいってほしい

 対立し続けること、はや25年。日本が生んだ最大のグルメ親子、山岡士郎海原雄山のお二方が終(つい)に和解されました。いやー感無量です……こんな日が来るとは。これは漫画界における「歴史的仲直り」といっても過言ではありません。政界で例えるなら田中角栄周恩来が成し遂げた「日中国交正常化」に匹敵する確執の氷解です。思い起こせば連載スタートはなんと1983年……白央たったの8歳です。小学生の頃通っていた床屋にあって、よく読んでいたのを思い出します。
「うまい豆腐は水がいのち」
「鰻好きは煙りで呼び寄せる」
 こんなセリフの数々にシビれたのも、はや四半世紀前。夕ごはんのとき、士郎の真似をして「レンジでチンのうなぎぃ?」とケチをつけたガキの私。「炭火で焼いた鰻が食べてみたいなぁ〜」ホザく私。母・フジエは速攻ブチ切れ、「じゃあ食べなくていいっ!」と夕飯の鰻丼を下げてしまいました。口は災いのもと……士郎を恨んだのも今は昔。
 ともかく今週発売の「ビッグコミックスピリッツ」、海原親子は1996年のペトリュスを共に飲んで無言のうちに和睦しています。いやーよかったよかった、といいたいところですが……ちょっと私的感想を。




 と、いっても大団円という感じではないので、さほどエモーショナルには盛り上がらず。随分と駆け足で仲直りしちゃうなあ、という感想。まあ、これからも漫画は続きますよ、という意味合いなのだろうけれど。
 ファンとしては「山岡、プロポーズ」のときのように、もうちょっとジックリ和解のドラマを見せてほしかった。作画の花咲アキラ氏は、そういう「心のあや」を描くの上手い人なのになあ。なんでも作者の雁屋哲氏は、100巻で完結させるつもりだったのだそう。キリがいいから、というただそれだけの理由だそうだが。次に出る単行本で102巻め、ただでさえ2巻も(食に関する雁屋氏からのメッセージという意味での)内容的にオーバーしているのに、このうえ人間ドラマまで入れる余地はない、ということだったんだろうか。なんともアッサリして、肩透かしな結末ではあった。


○追記
 私は……この手の長寿漫画って、「面白いから長寿漫画」ではなく、「存在することに意義がある」という「長寿」だと思っているので、「やれるだけやってください」という超・受動的応援の気持ちになってしまう。美しい花道を……という機は逸している以上、歌舞伎役者のように延々と存在してほしいなあ、と思ってしまうのだ。
 そう、「へえー菊五郎の息子がもうハタチかぁ」「成田屋の息子が結婚だってぇ?」こーんな感慨を胸に抱くヨロコビ、とでもいうのだろうか。長らくのファン、というのは自分の係累、その成長を見るような思いが、どこかしらにあると思う。
 海原雄山から山岡士郎、栗田ゆう子一族は、もはや漫画界の「ロイヤル・ファミリー」として末永く君臨していただきたい。そう、あの「○○県に行くときぐらいは……読んでみようかな」的な「全国味めぐり編」は、山岡一族の「ご巡幸」なのだ。なんのドラマもヘッタクレもなくて、仕方ないと思う。


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