プレミアム10「赤塚不二夫なのだ」

愛猫・菊千代と

 昨日のNHK総合プレミアム10赤塚不二夫なのだ」、これがとーーっても面白かった。スタッフが労をいとわず、あらゆる資料を集め、インタビューをとり、赤塚不二夫を全角度から見つめ上げた120分。なんと素敵な、ドキュメント・ショーだろう!
○大スターから怪獣まで
 ご存知「イヤミ」、「シェー」のポーズって……めっちゃくちゃ流行ったんですね。想像以上。長嶋茂雄や、来日したポール・マッカートニー、そしてさらにはゴジラまでもが「シェー」のポーズをとっている写真が紹介されていて、ビックリ! 
 いきなり話は逸れますが……こういう微細なところに、スタッフの熱意を感じてしまう。これ、放送は写真各々1秒にも満たないシーンですが、撮ってくるのは何倍も時間がかかるものだ。図書館や出版社の資料室にこもって、何百冊の中から探して撮影したのだと思う。そういう細かい「仕込み」――知られざる、忘れられている細かいネタをたっぷり入れ込もう、というスタッフの意気込みが随所に感じられた番組だった。


○鬼才3人からのオマージュ
 そうそう、喜国雅彦しりあがり寿みうらじゅんの各氏が「自分たちのギャグ・ルーツは赤塚不二夫」といって、思い出を語り合うコーナーもあった。しりあがり寿の「赤塚さんって、みんなを平等に差別しているんだよね」という発言、そして喜国雅彦の「一般常識がないからギャグが成り立たない」という発言が印象深い。
 あ、ただ唯一の不満が。三氏、みんなリスペクトしてるとか公言しちゃうんだったら、ここの撮影は刺しつ刺されつ、ベロンベロンになってやってほしかったなあ。だって、せっかくロケ地が赤塚さん行きつけの居酒屋なんだもの。女将に、赤塚さんの飲み方なども少し伺ってほしかった。
(ちなみに、場所は西武新宿線中井駅近くの「権八」)
 随分昔に行ったが、安くていいお店だった。


○漫画放映の優れた演出!
 そうだ、NHKにしては凄いセレクト……と思ったコーナーが。漫画一本、コマを追って見せるだけ、というもの。まず全部サイレント、これがよかった(民放なら間違いなく、タレントがアフレコ、効果音もバシバシ入れてしまうだろう)。内容はこんな感じ。
 眠れないバカボンのパパと、不眠症の羊がバッタリ出会う。いいことを思いついた、とパパ。わしはお腹がすいて眠れない、だから羊を食べるのだ。すると羊は「僕はものわかりのいい羊なんです」なぜか従順に従い、次のコマではジンギスカンに。わしも眠れる、羊さんも永眠できて良かったのだ〜!
 そんな、オチ。これが何の解説もコメントも入らず、スーッと終わり、暗転。うーん、シビれる!
 「それでいいのだ!」

○キラ星の如き仲間たち
 赤塚さんは、いち早くプロダクション・チームを作り、漫画の量産体制に備えた作家でもあったのだそう。その元・同僚&門下生がたくさん出ていたが……古谷三敏さんもそうだったのか! (「BARレモンハート」「寄席芸人伝」好きだったなあ……傑作です) それから「釣りバカ日誌」の北見けんいちさんが、素敵なエピソードを披露していたので紹介したい。
 昔、赤塚さんが「銀玉鉄砲」に凝ったことがあったんだそうな。その日も4人ぐらいで打ち合いをしていたら、(そこがトキワ荘だったのかは忘れてしまったが)藤子・F・不二雄さんが、「うるさいよ!」と怒ったのだそう。「滅多に怒るような人じゃなかったんです……だから本当に相当、うるさかったんでしょうねえ」
 あの生き神さまのような藤本弘先生が声を荒げられるなんて! (いや、もちろん私はお会いしたことないんですが……あくまでもテレビなどのイメージです) F先生が「しんぼうたまらん!」とキレたのかと思うと、たまらなく…おかしい。
 さらに話は続き、「赤塚さんは『当たっても服着てちゃ痛くないから、上半身は裸だぞー』なんていってねえ」四人のおっさんが半裸で鉄砲合戦を昼間からしてたんですよと、目を細めて北見さんは語っていた。すっかり青年の表情だった。


 もうメモしておきたいことは尽きない。ニャロメのヒントになったのは「長靴をはいた猫」だったりとか、とりいかずよしさんの証言「コマ割りはノンストップ、消しゴムをかけて描き直すところは余り見たことがない」という側面などなど。
 今年で赤塚不二夫さんは、無意識の状態で6年間になるそう。ラストは、ちばてつや藤子不二雄・A、先の北見、古谷、とりいなどの各氏に「もし今、赤塚さんがパッと目覚めたら、第一声はなんだと思いますか?」との質問がなされる。みな一様に「よく寝たなぁ」とか「これでいいのだ!」こんな感じじゃないかな、などといかにも赤塚さんらしい言葉を、笑いながら選ばれていた。
 本当に、愛されている人だ。


○追記

私はちょっと見逃したのだが、HPによると「山根青鬼」さんが出ていたよう。懐かしい! 同世代の人は覚えているかもしれないが「名探偵カゲマン」という作品があって、当時の少年のバイブル「コロコロコミック」に連載されていた。少年漫画ながら、どこかネガティブな陰のある作風で、そこがけっこう好きだった。


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