『不信のとき』にみる着物の妙

このレイアウト、見事です

 神保町シアターの特集「大映の女優たち」にて鑑賞。

 最終日ということもあってか場内満席、立ち見まで出る勢い。うーん、こんなに人気あるとは……ちょとビックリ! 席数は約100席ということだったが、オールド・ファン以外にもチラホラ若者の姿も。広々していて綺麗で、前の席との間隔もタップリ。シネマヴェーラ早稲田松竹に新・文芸坐と、最近の名画座はどこも見やすいなあ。
 筋はひたすら、色男・田宮二郎が、女という不可解な「いきもの」に翻弄されまくる……という話。妻、妾を中心に、姑、看護婦、お手伝い、ホステス、若い愛人、主婦と女の様々な形態と価値観が極彩色に描かれる。

 有吉佐和子らしい皮肉とユーモアがタップリの一作だが、今井正がこういうものを破綻なく演出できる、というのに驚く。だが正直、市川崑だったらもっと傑作になっただろうなあ。今井正らしい、生真面目な「長さ」が活きなかった。
 ただ絢爛たる女優陣、最盛期の若尾文子岡田茉莉子の美貌は、それだけで鑑賞の価値あり。増村保造の『妻二人』では溶け合わなかった二人の個性が、今回は好対照となって話を面白くしている。今回改めて感じたが、二人ともなんと首が細く、華奢なことか。鶴のごとき優美な曲線が、うなじから着物の襟にかけて現れ、ハッとする。


 特筆ものはその着物姿。映像的な色彩美を相当意識して、着物が選び抜かれている。原作で若尾の役は「青が似合う女」と表現されていたと思うが、相当通好みの「青」が何着も出てくる。濃い青ではなく、薄い青、水の色、甕のぞきの色……日本染色の奥深さが感じられるセレクトだ。
 そして岡田のいかにも「いいとこの奥さん」、といった紬の着物、その着方。ただこちらの奥方、ちょいと派手好みで、そのインパクトが面白い。最初に締めている朱だったろうか、帯の鮮やかさがいかにも大映、という感じだった。そして最近ではあまり見かけない、羽織がふんだんに出てくるのも楽しい。趣味の合う合わないはあろうが、着物好きの人なら堪らない映画だと思う。


○参照
 
1967年の岡田茉莉子。造形的な美しさでは日本女優屈指だと思う。


○付記
すっごい怒られそうだが……田宮二郎って、ほんのときたま「小倉智昭」入る瞬間がある。フッと似る。


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