みたび、「篤姫」

オープニングテーマが結構好き

 「いいっ!」 思わず声を上げてしまいました、大河ドラマ篤姫」。徳川慶福(14代将軍家茂の前名)を演じる松田翔太、これが思いの他よくてビックリ。なんせ、黙っているだけで「若殿」らしい風情が漂っている。私はどうも、松田=『ワルボロ』というイメージが強いもんで、見るまで想像つかなかったが……ああ、嬉しい裏切りだ。いい意味で、古風に凛々しいね。古い表現だけど、「高雅」という言葉を思い出されたほど。これからが楽しみ!
 今日は三回目の「篤姫」雑感、なんとも感想が書きたくなるドラマだ。


 いきなりですが、世の中では相変わらず「宮崎あおい篤姫は変だ!」という憤懣を抱えている方、多いようなんですね。特に(というか主に)宮尾登美子の原作ファンが許し難く思っているようで、その急先鋒が林真理子センセイ。前回の「週刊朝日」でも、ゲストの高橋英樹にブー垂れてらした。まあ、原作ファンというのは、ある種「娘を嫁にやる父親」みたいなもんで、どう映像化されたって文句の一つや二つあるもんでしょう。
 しかし、だ。そーいう「うるさ方」って、高畑淳子演じる本寿院には何の文句もないんだろうか!? あの演技、私には「邪魔」としか思えない。あのフザけ方、デフォルメの仕方って、腰元とか、出入りの商人とかの「位の低い役」だけに許されるもんじゃないだろうか。
 優れた俳優は、その辺りの見定めが上手い。西田敏行が昔、「藤吉郎」のときは軽い演技で笑わせつつ、「秀吉」になったときは、ユーモアを貫禄で包んだ演技に変えたように。
  普段はまだしも、あれで許す。だが今回、篤姫サイドが我が意に反する動きをしている、と気づいたときの怒り、その「重さ」が薄い。軽い。普段とのギャップがほしい。これぞ権謀術数の大奥を生き抜いて生きた女、その重厚感がほしい。この人怒らせちゃ「シャレにならない」という感じが決定的に欠けるんだなあ! 


 そのほか、松坂慶子さんの怒涛の「がぶり寄り演技」は一段と磨きがかかるばかり。内館牧子横綱審議委員も「次の綱はあの方に!」とコーフンしてるんじゃないだろうか。いや、褒めてるんです。マジで。
 そして今回特に光ったのが、ともさかりえ。いかにも地方武士の奥方といった、飾らない質朴な雰囲気が大奥とのいい対比になる。しかし、本当に女優のキャスティングがいい作品だ。
 あ、そうそう。このドラマ、男がドンドコ消えていきますね。結構な大きい役が、サクッといなくなる。前回の草刈正雄、「急病降板か!?」ぐらいの勢いで消えた。重要な進言をしたかと思うと、その2シーンぐらいあとには顔に布がかぶせられて。今回も江守徹、なんの葛藤もやり取りもなく、いきなり「政界から引退しました」のナレーションだけでさようなら。徹底して男のドラマを最小限にしている――高橋英樹さんが分析されてましたが、これがヒットの一番の要因なんでしょうね。


○言葉もない
 夜、ネットニュースの詳述を読んでいて、気持ち悪くなってしまった。「篤姫」を観た楽しい気持ちが、一気にそがれる。秋葉原で白昼、通り魔殺人が起きた。7人の方が亡くなられた。
 私は今、33歳だ。33年+お腹の中1年。その間、怪我をしないように、病気をしないように、より高い「知」を得られるように、34年間、親が気遣い、大人になってからも何彼面倒見てきた、その年月。
 もし、私が今日秋葉原にいたとして。不運な偶然が重なったとして。それがすべて、一瞬にして無に帰すのか。同じように、犠牲者の方々にも、親が、周囲が、共に生きた人が育んだ年数がある。自分が積み上げた歳月がある。
 19歳から74歳までの方が亡くなられた。年の数は関係ない。命あらんと人が慈しみ、自分が時を慈しんだ年数が、すべて一瞬にして無に。この犯人に死刑などという「祝福」を与えていいのだろうか。


○行状記
 一日家で過ごす。スカンピンなので、家から出られない。映画『刺青』を何年ぶりかで見直す。着物の面白さを改めて痛感。以前編集さんに頂いたXO醤オイスターソースでスープ・ビーフンを作ったら、けっこうそれらしい味になった。お礼をここで申します。ありがとうございました。


○お知らせ
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