脇役が光るコクーン歌舞伎

29日まで

 コクーン歌舞伎、拝見してまいりました。ロビーに入れば、「こしらえ」を終えた役者があちこちに。夏祭に訪れた昔の人々、という設定でセリフを交し合っている。そうしているうちに、段々と芝居がはじまってゆく……という演出。「いらっしゃいませ」「お久しぶりじゃありませんか」やら、ご贔屓と挨拶をする人なんかもいたりして。まるで俳優祭のような楽しい雰囲気、いいもんです。18日に拝見してきた観劇メモ。

■第一場 発端からお鯛茶屋の場〜第二場
 何よりも素晴らしいのが、磯之丞を勤める中村芝のぶ。品がありつつ、いかにも「ぼん」らしく自己中心的で、世間知らずで、それでいて憎めない……朗々とした調子も耳に快く、女形の余技を超えた傑出した芝居だった。
 出だしから鳥居前の正札の見得、ここまでが実にスーーーッと事が運ぶ。カットの「し具合」が非常にいい。次の三婦のところがジックリ長いので、これは嬉しいなあ。
 しかしお梶というのは、趣味のいい女だ。この場では、黒に近いような深い茶、井桁の紗小紋に白献上、そして二幕目は雨小紋……随分と江戸ごのみに思えるが、実のところどうなんだろう。西では小紋は好まれない、と宮尾登美子さんや谷崎松子さんも書いていたが、この時代は違うのだろうか。それとも着る層によるもの……? もしくは芝居が東に伝わって変えられた……? お詳しい方いらしたら、どうぞ教えてください。


■第三場 釣三船婦内
 おつぎは前回と同じく、歌女之丞。こういうチャッキリした大阪女、というのもありかな、と思わせる巧者ぶり。以前勤めた、中村千弥のまろみ豊かな演技と対照的。
 お辰は初役・勘太郎。現代的なテンションのもっていき方、気持ちの作り方が垣間見える。スタニスラフスキー的、というかリアルな感情の作り方。ときにそれが邪魔に思えるが、歌舞伎流ではなく、串田和美と共につくりあげた「お辰」と聞いて納得。それはそれで意義のあることだと思う。
 何より、姿がよかった。すっきりとしつつ、腰から太腿にかけての線がまさに若妻の色気が漂う。黒の紗から透ける長襦袢に包まれたそれは、伊東深水の「指」を一瞬思い出させた。三婦が「色気がありすぎる」と気に病むのもさもありなん、と思えたお辰だった。
 あとザッとメモ列記。この日は勘三郎、すこし疲れ気味に思えてしまった。九郎兵衛内の場、緑のライトに切り替わる演出が……分からない。ヒッチコック的な演出? 私には効果的に思えなかった。同屋根の場、立ちまわりは前回のように小さな家屋敷を模型で。こないだは八大が演じた捕り手を橋吾。さすがに八大のようにはいかななったが、なかなか。
 そしてエンディング、うしろブチ抜いちゃう演出はカタルシスの極致ですねー……「思わず!」という感じで起こったスタンディング・オベーション。ああ、興奮した! 和太鼓の演出も素晴らしくエキサイティング。久々に「劇場に来てよかった!」と大声出したくなりました。


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